リカちゃんと僕
鹿嶋 雲丹
第1話 リカちゃんと僕
僕は焦げ茶色のクマのぬいぐるみ。
ふわふわの巻き毛がかわいいって、主のキヨちゃんは大喜びしてたけど、僕は男の子なんだ。
そんな僕の憧れの女性、“リカちゃん”。
きらきらと輝く金色の髪。つぶらな黒い瞳。
僕は一目で虜になった。
リカちゃんは、きらきら光るふわふわなドレスを着せられて、まさにお姫様のようだった。
リカちゃんはお姫様。僕は彼女を守る
そんな妄想をしては、胸をときめかせていた。
そんなある日、事件は起きた。
リカちゃんの滑らかな頬に、黒い油性マジック。
ふわふわのきれいなドレスは、ズタズタ。
僕のお姫様に、なんてことをしてくれたんだ!
僕は犯人であるキヨちゃんの弟を睨んだが、まるで効果はない。
そのうち、リカちゃんは神様の国に行く事になった。
『キヨちゃんの事、お願いね』
僕のお姫様は、僕にそう言い残した。
さよならを告げた後、僕はずっと怒っていた。
なにが
それから何年も経って、キヨちゃんは何年も触っていなかった僕を手に取った。
あぁ、僕も神様の国へ行く日が来たんだ。
「洗濯したら、キレイになるよね」
キヨちゃんは言った。
「あなた、小さい頃はリカちゃん人形でよく着せ替えごっこして遊んでいたわよね」
キヨちゃんのママが言う。
「うん……楽しかったなぁ、リカちゃんで遊ぶの」
僕の胸の中で、懐かしげに言うキヨちゃんの声がこだました。
楽しかった……そうか、楽しかったんだ……なら、リカちゃんは使命を全うしたんだ。
僕のお姫様は立派な女性だった。僕はとても誇りに思う。
『キヨちゃんの事、お願いね』
別れ際のリカちゃんの笑顔が蘇る。
その顔が油性マジックで汚れていても、華奢な体をズタズタのドレスに身を包んでいても、あなたはとても美しい。
僕は神様の国に行くその日まで、ずっとキヨちゃんにメッセージを送るよ。あなたの分までね。
キヨちゃん、大好きだよって。
リカちゃんと僕 鹿嶋 雲丹 @uni888
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