異世界人形館
大舞 神
第1話 ぬいぐるみと人形
お店の明かりが消えていく。
静かになった店内で僕は思う。
「僕はなぜ存在しているんだろう」
買われない商品に価値はあるのか?
人に抱かれないぬいぐるみに価値はあるのか?
「そもそも間違えているんだ」
どうして僕はここで販売されているんだ?
ここは人形館。
僕以外は全てが人形だ。
人形や、そのパーツを販売するお店。
ぬいぐるみは僕だけだ。
「ブツブツうるさいわよ、売れ残り」
僕が思考の渦に沈んでいると、嫌な子が声をかけてきた。
「そんな女々しいから売れないないのよ」
デカイ癖に、と嫌味を言ってくる。
彼女は嫌味なんだ。
「関係ないよ」
「あるわよ。あなたの女々しさがポーズに出ているのよ!」
僕たち売り物はお客様がいるときは喋れない。
だからポーズを変えてアピールするんだ。
「もっと男らしく大胆なポーズにしなさい」
僕は椅子に座り前傾姿勢でアゴに手をやり難しい顔をしていた。
表情は別にかわらないけれど。
クールでカッコイイと思うんだけど?
男らしく大胆なポーズってなんだろう?
彼女のポーズを見れば椅子に座り足を組みややのけ反っていた。
実に彼女に似合っている。
嫌味っぽい座り方だ。
スターズシリーズの中でも『お姉様』と呼ばれるだけのことはある。
創造主に彼女が呼ばれている時、他のシスターズが『行き遅れ《お姉様(笑》』と嗤っているのを知っている。
バンシーシスターズは凄く嫌な性格をしているんだ。
でもお客様の前では喋らないから、彼女たちは店で一番の人気商品だ。
お店の隅で陰っている僕と違って、専用の売り物台の上で色とりどりに着飾っている。
「バカにしているの?」
考え込んで腰が曲がってきたら彼女に呆れられてしまった。
僕は彼女が売れ残る理由を知っている。
彼女たちはシスターズとして複数で買われていくことが多い。
でも彼女は孤高の存在。
だから売れないんだ。
「まったくもう、こうよ、こう!」
教えてあげないけどね。
異世界人形館 大舞 神 @oomaigod
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