書籍一巻発売記念SS

 2024年2月22日 一巻発売記念SS。




「「「「おめでとう~!」」」」


 シホヒメと綾瀬さん、奈々、美保さんからの祝う声と、パーンとクラッカーが音を鳴らして紙吹雪を散らした。


 俺の頭の上に載ったリンは体を伸ばして、俺のおでこを優しくポンポンと叩く。


「あはは……あまり実感はないが、ありがとう」


 俺は手に持っていたスマホを覗き込む。


 そこに書かれているのは――――《チャンネル登録者数:100,002人》という文字。


 最近は俺のチャンネルでダンジョン攻略を配信して、妹のチャンネルで日常配信をおこなっている。


 ずいぶんとリスナーも増えていたなと思ったら、まさかのチャンネル登録者数が6桁に突入した。


 5桁に入ったのもこの前だった気がするんだが……リンが従魔になってから時が過ぎるのが速い気がするな。


「お兄ちゃん~じゃじゃ~ん」


 嬉しそうな笑みを浮かべて奈々が取り出したのは、真っ白いクリームと果物がたくさん載っている美味しそうなホールケーキだ。


「美保さんに手伝ってもらって初めて作ってみたの!」


「なっ!? 奈々が作った……ケーキ!?」


「えへへ~美味しさは保証できないけど、ちゃんと愛情はいっぱい入れたからね?」


「がはっ!?」


 恥ずかしそうに笑う奈々の可愛さに俺は雷に打たれたかのような衝撃を受けた。


「エムく~ん。ケーキ早く食べようよ~」


「シホヒメ」


「うん?」


「このケーキは誰にも渡さん。俺が全部食べる」


「え~! 独り占めするの?」


「ああ!」


「私も食べたい! 奈々ちゃんのケーキ食べたい!」


「やらん!」


「一口だけでもいいから!」


「いやだ!」


「ちょっとだけ……」


「ダメ」


「先っぽだけでいいから!」


「それでもダメ!」


「じゃあ、ちょっと舐めるくらいでもいいから!」


 俺に突撃してくるシホヒメを片手で押し返しながら、頑張ってケーキを守る。


 妹が初めて作ったケーキを誰かに渡すわけにはいかないっ!


 次の瞬間、俺の背中に優しい温もりが伝わる。


 俺の二の腕の下から白い髪が揺れてぴょっこりと顔を出したのは、奈々だ。


「お兄ちゃ~ん? また作ってあげるから、今日はみんなで食べよう?」


「なっ!? な、奈々はなんて優しい子なんだ!」


「奈々ちゃんのケーキ~!」


 俺が腕の力を緩めた瞬間、シホヒメがケーキを持っていた俺の右腕に飛びついてきた。


「う、うわあ!? ケ、ケーキがああああ!」


 勢いよくぶつかったせいで、俺が持っていたケーキがぴょ~んと宙を舞う。


「奈々ちゃんのケーキぃぃぃぃ!」


「シホヒメぇええええええ!」


 部屋に俺とシホヒメの叫び声が響く中、黒い影が超高速で動いて、宙を舞って落ちる運命だった妹のケーキが、地面に落ちることなく綺麗に保たれて、テーブルの上に置かれた。


「ご主人しゃま……ケーキ……落とさないで……」


「リ、リィィィィィン! ありがとうぉぉぉぉぉ!」


「リン様あああ、ありがとぉぉぉぉぉ!」


 俺とシホヒメはすぐにリンの前で土下座をした。


「えっへん……」


 それからはみんなでリンをなでなでしてあげて、奈々が初めて作ったケーキを仲良く分けて食べた。


 世界一美味しいケーキに幸せになった。





――――【あとがき】――――

 遂にダッシュエックス文庫様より本日発売になりました!

 お店によってはサイン本も売っておりますので、ぜひ本屋で見かけたら手に取っていただけたら嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【WEB版】底辺探索者は最強ブラックスライムで配信がバズりました! ~ガチャスキルで当てたのは怠惰な人気者~ 御峰。 @brainadvice

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ