バーチャルクレーンゲーム体験記

アーカーシャチャンネル

ぬいぐるみからすべてが始まった

 クレーンゲーム、今でこそ様々な商品が並べられているのだが、その昔はぬいぐるみだけだったらしい。


 過去には、お菓子を取るクレーンゲームもあったので、それをぬいぐるみにしたら大ブレイクした、というのが真相のようだが。


 リアルのゲームセンターで見かけるクレーンゲームも、最近はフィギュアだったりラジコン、果てはクッションといったような多彩な景品が魅力となっている。


 それでもぬいぐるみを扱わなくなっていく流れにはならず、むしろソシャゲのキャラクターがぬいぐるみになったり……と言った別のビジネスチャンスもあった。


「ネットのクレーンゲーム、か」


 その中で、ある男性配信者が目撃したのはインターネットでプレイできるクレーンゲームだった。


 匿名掲示板などでは「景品が取れない」や「景品を取ったが、届いた商品が違った」というような書き込みもある。


 それらの書き込みが事実かどうかを調べる手段はないが、いくつかはリアル店舗のクレーンゲーム機をリモートでつないでいる場合が多い。


 しかし、彼が探しているのは別のクレーンゲーム機だった。



 そして、数十分後に発見したのはバーチャルフィールドに設置されたクレーンゲーム機だった。


 いわゆるメタバースでプレイするクレーンゲームというべきか。景品に関しても色々とあるのだが……。


「これは何処かで見覚えがあるような?」


 クレーンゲームを紹介しているスクリーンショットを見ると、リアルゲーセンで見覚えがあったぬいぐるみだった。


 ぬいぐるみといっても一般的な動物ではない。明らかに他社ソシャゲのキャラクターである。


 この真相を確かめる為、彼はVR一式を起動させて、該当するメタバース空間へと向かった。



 それから数分後、目的のぬいぐるみを取る事には成功する。確率をいじって取れないようにするようなケースも多い中、ここはおかしくなかった。


 しかし、手にしたぬいぐるみはどちらかというとNFTに近い状態だったのである。メーカーとは無関係な第3者が、こうした手段で利益を出すのはさすがに危険だろう。


『このクレーンゲームを実際に体験はしましたが、皆さんもトラブル回避という意味で景品をちゃんと確認してからにしましょう』


 数日後、彼はバーチャル配信者という顔も持っており、配信内で一連のクレーンゲームに関して話していた。


『今回発見したバーチャルクレーンゲームは、該当する会社が運営していたわけではなく、全く無関係な第3者が展開していたNFTクレーンゲームだったことが問題かもしれません』


『皆さんも、リアルのガチャで非公認の芸能人などを題材としたグッズが売られているのを見たことがあるでしょう。そうしたケースと今回が同じかどうかは不明ですが……』


 彼の方も、バーチャルクレーンゲームというアイディア自体は良かったのだが、入手できる景品に問題があったと指摘している。


 リアルの方でも目撃される種類のぬいぐるみだった、ということで今回のケースは発見できたが、これがもしも版権作品ではない動物だったとしたら……。


 これによってビジネスチャンスという事で便乗展開する事自体が悪であるという認識が拡散されないことを、彼は祈っていた。


 ぬいぐるみ自体は悪くない。悪いのは、売り方を間違えた側なのだから。

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