じゅんくんのミュー【KAC20232】

銀鏡 怜尚

じゅんくんのミュー

 じゅんくんは、ねこのぬいぐるみが大すきでした。そのぬいぐるみにはミューという名まえがついていました。ねるときもごはんのときもいっしょ。学校にももっていっていました。

 ランドセルにずっと入れておくのは、とてもくるしそうだったので、たまにそとに出してあげていました。


 こっそりとミューをかわいがっているのが、しだいにクラスのみんなもわかってしまいました。女の子たちには気もちわるがられ、男の子たちにはいじめられたりするようになりました。しかも、学校にぬいぐるみはもってきてはいけないようなので、先生はいじめっ子ではなく、じゅんくんをちゅういしました。


 でも、じゅんくんはミューを学校にもっていくことをやめませんでした。それくらいじゅんくんにとって大切たいせつなものでした。


 そんなじゅんくんにたいするいじめは、日に日にはげしくなっていきました。いじめっ子の中でいちばんつよいゆうじくんが、とうとうミューをうばいとってしまいました。

「ボロボロのきたないねこじゃないか」

 ゆうじくんはミューのくびをむりやりひねったり、ひっぱったりしました。ずっとだまってがまんしてきたじゅんくんも、このときばかりはおこりました。

「ミューをかえせ!」

 じゅんくんはゆうじくんにとびかかり、ミューをとりかえしましたが、そのことにおこったほかのいじめっ子の男の子たちは、

「じゅんのくせに、なまいきな!」

 といって、じゅんくんをたたいたりけったりしてきました。じゅんくんはミューをまもるようにだきかかえながら、がまんしました。


 ある日、遠足えんそくで、まちからとおくはなれた大きな公園こうえんにバスでいきました。じゅんくんはこの日もリュックサックにミューを入れていました。

 バスでは、となりにだれも座っていなかったので、じゅんくんはミューを出して、けしきをたのしんでいました。

 

 そのとき、バリンと大きな音がして車がゆれまれた。大きなトラックがよこからぶつかって、じゅんくんがすわっているほうのガラスがわれたのです。

 われたガラスのまどのほうにすわっていた子たちは、けがをしましたが、じゅんくんだけはどこもけがをしませんでした。そのかわり、ミューにガラスがささっていました。

「ミュー!」

 じゅんくんは、かなしさのあまりミューにこえをかけました。

 するとミューがしゃべったのです。じゅんくんにはきこえました。

「いつもぼくをまもってくれてありがとう。こんどはぼくがじゅんくんをまもったよ」

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