さいしょのあの日
きみどり
さいしょのあの日
魔犬が大きく跳躍する。そのまま放物線を描くように突っ込んできたソレを、俺は迷わず串刺しにした。
切っ先を向けて構えていただけの剣に、魔犬は自らの勢いで深々突き刺さり、ぶら下がる。
それが狙いだったのだろう。
死体に剣を呑み込まれたままの俺に、四方八方から新たに魔犬が飛び掛かってきた。
「ダメーッ!」
叫び声。と同時に、俺と魔犬との間に何かが飛び込んできた。ピンク、オレンジ、グリーン。カラフルな何かが魔犬に引き裂かれ、綿が飛び散る。
その隙に俺は小癪な屍の鞘を払い、瞬く間に魔犬を殲滅した。
「無駄なことするな! 手ぇ出さなくても勝てた!」
戦闘が終わって、まず叱責を始めた俺に、目の前の幼馴染みはへにゃりと笑う。
「だって怖かったんだもん。君までいなくなっちゃったら、僕は……」
◆
「縫って
焚き火の傍ら、調子外れな歌が響く。幼馴染みが手際よく動かしているのは仄白い光を抱く針だ。自身の胸からスルスルと出てくる糸を使い、布を縫い合わせていく。綿を詰めて、仕上げに綿入れ口を綴じれば完成だ。
「できたっ! これでまた君を守れる」
「だから余計なことするなって」
対象は能力による針と糸を用いた
「もっと作らなきゃ」
苦笑する俺をよそに、彼は新しい布を取り出した。
俺たちの故郷は魔物に滅ぼされた。
あの日、俺は彼の目の前で魔物に腹を掻き切られて死んだ。
彼の魔力は膨大だったのだろう。
自分で見たはずのないその光景を記憶しているのは、俺がもう彼の一部だからなのだろう。
統率のとれた大群には明らかに司令塔がいた。僕達はソイツを見つけ出し、必ず殺す。
さいしょのあの日 きみどり @kimid0r1
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