「書」と「絵画」の類似点




 私は「書」と「絵画」の類似点は「一目観て、パッと全体像が把握できる」事である、と思っています。



 また、「書」は紙の上に。「絵画」もキャンバスや紙の上に描かれています。これも「類似点の1つ」だと思っています。


 そして、私が強く感じるのは「何も描かれていない空白の部分も作品の1部である」と思えるところです。これは「絵画」では、1部のジャンルでしか感じられない事になってしまいますが。 


 「書」と「絵画」には多種多様なジャンルが存在します。


 「書」で言えば、大まかに言っても「漢文」「かな」「調和体・漢字かな交じり」「篆刻てんこく」「前衛」があり、その中でも「漢文」は「楷書かいしょ行書ぎょうしょ草書そうしょ」に別れます。「かな」も「ひらがな」「変体仮名」「連綿れんめん」等があります。


 「絵画」はまず「日本画」と「洋画」に別れます。「日本画」には西洋美術に大きな衝撃と影響を与えた北斎や歌麿や若冲などの「浮世絵」と呼ばれる「版画」も含まれますが、ここでは割愛します。「日本画と洋画」は使用している「絵具」によって分類されます。以前の私は日本画と言うと「掛け軸」を連想していましたが、芸大で日本画を専攻していた知人の作品を観る為に何回か芸大の学園祭や芸大に行きました。そして、キャンバスに描かれていても「使用している絵具が日本画のものであれば、その作品は日本画だ」と言う事を知りました。日本画の絵具とは大雑把に言えば「岩石等の鉱物」であり、それを絵具として使用する為には「にかわうるし」を定着材として使用する事が必要になります。

 「洋画」の絵具は、皆様ご存知のように「油絵具」です。その他として「水彩画は水溶性絵具」「パステル画はパステル」となります。


 日本画の絵具と洋画の絵具の1番の違いは「日本画の絵具は乾くのに時間が掛かる」と言う事でしょうか。そりゃ原料に膠や漆を使用しているのですから、乾くのが遅いのは当たり前ですね。ですから、日本画は洋画のようにキャンバスを縦にして描く事が出来ません。絵具が流れてしまうからです。私が芸大に行って1番ビックリしたのは日本画を描いている学生さん達がキャンバスを床に置いて描いている事でした。そして、ある程度まで描いたら絵具が乾くまで待たなければなりません。かなり大きなキャンバスに描いている人は大変です。洋画なら距離を置けば全体像を掴む事が出来ますが、日本画は床に置いているので全体像を掴むには高い所へ行かなければなりません。それで大きな脚立きゃたつを持って来て、その上に登ったり2階からキャンバスを見て全体像の確認をしたりしていました。


 話が「日本画」に偏ってしまいましたので次は「洋画」について触れてみたいと思います。


 西洋に於ける美術の発端は「原始美術」だと思います。旧石器時代後期 (現在より200万年ほど前) に入った頃より、実生活には機能するとは考えにくい遺物いぶつ遺構いこうが見られるようになりました。これらで有名なのは洞窟絵画ですね。フランスのクニャック洞窟に描かれた山羊、スペインのラス・チメアネス洞窟に描かれた鹿などが知られています。特に有名な物としてはラスコー洞窟やアルタミラ洞窟が挙げられます。


 これからメソポタミア美術やエジプト美術、ギリシア美術、ローマ美術と様々な芸術が花開きますが、「絵画」と言う観点から見ればギリシアで紀元前5世紀初頭にポリュグノトスやミコンといった画家により「トロイアの陥落」「マラトンの戦い」などの神話歴史画が描かれました。これによって大絵画と言うジャンルが確立しましたが、ここで私が書こうとしている現在の美術館で「書」と同じように観る事が出来る「洋画」とは程遠いので割愛します。興味のある方は専門書を読んだりウィキペディア等で調べてみて下さい。今で言う西洋画の代表格とも言える「油絵」の技法が確立されたのは15世紀と言われています。


 

 さて前置きが非常に長くなり、その説明も不十分で恐縮しておりますが現在の美術館に行ってみましょう。この場合は特別展などが行われていない、地方都市でも1つくらいはある普通の美術館の常設展示となります。


 入館してみると様々な絵画が展示されていますが、その殆どが「油絵」つまり「西洋画」です。「日本画」も少しはありますが掛け軸ばかり、と言う印象です。そして「書」に至っては、ほんの僅かです。「漢文」の「楷書」が2、3あるだけ。それだけ「書」と言う分野がマイナーなもの、と言う事なのでしょうね。「油絵具」はそんなに高価ではありませんから趣味として始めるのなら「油絵」が1番向いている、と思います。私の姉が趣味で「油絵」を描いていましたが素人が描いても「油絵」は「何となくそれなりに」見えてしまうのです。勿論、専門の人が見れば「素人とプロの差」は歴然ですが。それに対して「書」は基本からきちんと修練しなければ「それなり」に見える作品も描く事は出来ません。しかし「私は習字を子供の頃にしていた」と言う方も多いと思います。これは「書道部」に在籍していた方なら判ると思うのですが「習字」と「書道の書」は根本的に違うのです。これは実際に書道展に行って「本物の書」を観なければ判らないと思います。「じゃあ、お前には判るのか?」と私に聞かれても「うーん」となってしまうと思います。お恥ずかしい話ですが。しかし書道展に行って「本物の書」を見れば「これはスゴイ」くらいは判ります。それでは「本物の書」を沢山観る為には何処へ行けば良いのでしょうか ?


 結論から言ってしまえば「本物の書」を沢山観られる場所と機会は存在します。「スポーツ系の部活動」に全国大会があるように「文科系部活動」にも全国大会があります。書道部の場合は「国際高校生選抜書展」通称「書の甲子園」と呼ばれている大会があります。


 この「書の甲子園」は「とめはねっ!」の中でも重要なウェイトを占めており、それに挑む主人公を含めた様々な高校生達の「人間群像劇」が見事に描かれています。そして高校生の大会と言えど賞を獲得した作品では「本物の書」が観られる、と私は思っています。


 


 それでは「書の甲子園とは ?」について話さなければならないのですが今回は説明の文章がとても多くなってしまっています。これでは読んで下さっている方々も疲れてしまう、と思います。書いている私自身も疲れていますので。ですから「書の甲子園」に関しては次回に書いてみたいと思います。中途半端な形で「つづく」にする事を大変申し訳なく思っています。ここまで読んで下さってありがとうございました。








つづく


 


 


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