愛しい彼

LAYLA

第1話 彼がくれたぬいぐるみ

ある日、私は雨の中傘を差しながら家路を急いでいた。

公園を通りかかると、人影があった。

こんな夜中に、しかも雨の中人がいるので、少し気になって見てしまった。

そこには綺麗な顔の男の人が、傘もささずにベンチに座っていた。

公園には東屋があるのに、わざわざ濡れている彼に興味を持ってしまった。

近寄ると彼は私に気付き、目が合った。

目が合った瞬間、私の心は電気が走った。

彼との出会いは運命だと感じた。


濡れている彼を放っておけなくて、私は傘を向けた。

「濡れますよ?」

「私の家あと少しだから、大丈夫。」

傘を手放すと、私は立ち去った。

本当は連絡先を聞きたかったけど、少し恐怖も感じたのでやめた。

もし本当に運命の人ならまたどこかで会えるはず。


翌週、また雨の日。

案外早くその再会はやってきた。

またあのベンチに座っていたが、今度は濡れていない、私がこの前貸した傘をさしていたからだ。

私に気付いた彼がこっちにやってきた。

「あ、あの。この傘返したくて、雨の日を狙ってました。」

「コンビニの傘だよ。わざわざ良いのに。」本当はまた会えたことが嬉しかったけど、照れくさくてちょっとそっけなくしてしまった。

これを機に彼と連絡先を交換。付き合う事になった。


彼との幸せの日々は、私が今まで感じていた心の隙間を埋めてくれるもので、私は「幸せってこれなんだ…。」と噛みしめて生きていた。

しかし、そんな幸せは一瞬で崩れ去った。

彼が事故に遭い帰らぬ人となった。私は悲しくて悲しくて毎日泣いた。

彼がこの世から消え去るのが許せなかった。

私は彼が側にいると思える何かが欲しかった。

彼が生前プレゼントしてくれたぬいぐるみに彼の遺骨を埋めた。

私の心は少し満たされた。

彼の命日の日、ベッドから彼の声がした。そこにはぬいぐるみが置いてあった。

「あ、彼が宿ったんだ。」私は心底嬉しくなった。これでこれからもずっと一緒だね。

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愛しい彼 LAYLA @layla_layla

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