呪いのぬいぐるみ

異端者

『呪いのぬいぐるみ』本文

 母親がその熊のぬいぐるみを見つけたのは、とあるアンティークショップだったそうです。ちょうど小さな子どもが抱えるのにぴったりのサイズでした。

 母親はそのぬいぐるみを買おうとしましたが、店主は言いました――ここには曰く付きの品もあるが、それは特別だ。呪われている、と。

 だが、母親は娘へのプレゼントにと譲りませんでした。そんなものは迷信だ。私は大丈夫だ、と。

 口論しましたが、店主が折れました。店主は絶対に返品しないことを条件に、そのぬいぐるみを売りました。

 そして、母親は娘にプレゼントしました。少々高い買い物でしたが、仕事が忙しくて娘の相手があまりできないので、何か特別なプレゼントがしたかったのです。

 娘は生まれつき体が弱く、家で休んでいることが多かったので、抱いて眠ることができるこのプレゼントに大喜びでした。父親もそんな娘の様子にまんざらでもなさそうでした。


 もっとも、それ以来娘の体調は悪化しました。

 以前より頭痛や体のだるさを頻繁に訴えるようになりました。

 母親はそんな娘を思ってか、忙しい合間に各地の病院に連れて行きました。

 それでも、原因は特定できません。父親は母親を少し休ませようとしましたが、娘が心配だと言って相手にしません。

 ある日、母親は父親に呪われたぬいぐるみだと言いました。父親はそんなもの迷信だ。少し休むようにと勧めましたが、母親はそのぬいぐるみを処分しました。

 けれど、娘の病気は治りませんでした。それどころか更に悪化しました。


 数日後、母親は捕まりました。

 たまたま早く帰宅できた父親が、母親が娘の食事に何か混ぜているのに気付いたのです。

 その時は見つからないようにやり過ごし、後で確認すると有毒な化学物質でした。

 父親が怒りに任せて問い詰めると母親は「娘のことを大事にしていると見られたかった」と言いました――代理ミュンヒハウゼン症候群だったのです。

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呪いのぬいぐるみ 異端者 @itansya

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