幼馴染の遺品、ミチルちゃん
綾乃姫音真
幼馴染の遺品、ミチルちゃん
幼馴染が病死した。同い歳で同性。幼稚園から彼女が入院する高校1年までずっと同じクラス。家族以上に同じ時間を過ごしてきただけにショックは非常に大きかった。
部屋に引きこもって散々泣いて、ひたすら想い出に浸る。そんな1週間だった。当然、学校もサボり。私の両親は何も言わなかったけれど、流石にこれ以上はマズイと思ったし、なにより彼女が怒る。明日からは学校に行こう。そう決意した日の昼、彼女の両親からひとつの紙袋を渡された。彼女の意識がまだハッキリしていた頃、自分が死んだら私に渡してくれと遺していたモノらしい。中身は1体のぬいぐるみと、お揃いで買ったアクセサリー類が幾つか。
「ミチルちゃん」
ネームタグ付きのイルカのぬいぐるみ。青い体にピンクの目。可愛いとは思うけど、正直私の趣味じゃ……。
「……」
というかあの幼馴染は自分の名前をぬいぐるみにつけて私に遺したの? 自分だと思って大切にしろという意味なのか、別の意図があるのか。そのときはわからなかった。
「んん……っ!?」
夜中、変な気配を感じて目が覚めた。慌てて身体を起こして、電気をつける。
「……気のせい?」
部屋の中は寝る前と変わっていなかった。
「きゃっ」
不意に足先に柔らかい何かが触れた。反射的にベッドを確認する。掛け布団と毛布の下でモゾモゾと動く物体が、ジワジワと寄ってきていた。
「ちょ!?」
咄嗟に手で布団と毛布を振り払うのと同時に、イルカが飛び出した。そのまま私の胸に頭を埋めるようにして、感触を楽しむように動くミチルちゃん。亡くなったみちるも同じように私の胸を堪能していたなぁと懐かしいような、死んでも変わらないのかという。恐怖よりも呆れが来ていた。
「みちる」
呼びかけに顔を上げるミチルちゃん。
「この、お、おっぱい大好き星人め」
ミチルちゃんを抱きしめた私の声が涙混じりだったのは、どうしようもないことだった。
幼馴染の遺品、ミチルちゃん 綾乃姫音真 @ayanohime
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