ぬいぐるみにまつわるアレやコレ
鹿嶋 雲丹
第1話 ぬいぐるみにまつわるアレやコレ
ぬいぐるみ、という言葉を聞くと必ず思い出すある曲のワンフレーズがある。
それは童謡『おもちゃのチャチャチャ』の“おもちゃは箱を飛び出して”という部分だ。
「おもちゃが勝手に飛び出すんか! んじゃあ、あのぬいぐるみも夜中に踊ってるに違いない……いったいどんな踊りなんだろう」
幼い頃から脳みそがファンタジスタにできていた私は、恐ろしいようなわくわくするような、複雑な気持ちで夜眠りについていた。
優雅なワルツの曲で踊るのか、それともアフリカンなワイルドな踊りなのか……
それは遂に判明することはなかった。
その後、ぬいぐるみ大好きっ子の私はある年のクリスマスプレゼントに、大好きな祖母に大きめのぬいぐるみをねだった。
48歳になった今でも覚えている、割とリアルなコアラのぬいぐるみだ。確か小学三年生頃だったと記憶している。
その当時、コアラはまだ今ほどメジャーな動物ではなかったし、あの質感から察するに、きっと高かったに違いないと今さらながら思っている。
当時の私はそのコアラのぬいぐるみを抱き、狂喜乱舞した。
ところが、我が家には激強の“ぬいぐるみキラー”が存在していたのである。
その名をチチという。漢字で書くと父という生き物だ。
父は埃がたまるからという理由で、私に無断でぬいぐるみを捨てた。
このコアラのぬいぐるみもそうだが、小学六年生の時に友達からもらったかわいい白猫のぬいぐるみも、父の餌食になった。
だがしかし、小心者の私は我が家の最高権力者である父に対して文句も言えず、涙を飲んだ。
その後3児の母になった私は、娘や息子が大切にしているぬいぐるみは絶対に捨てないと心に決めている。
それはもちろん、自分がされて嫌だったからだ。
まだ生きている父が、今後何らかの不幸に出くわした時、私は密かに思うだろう。
それみたことか、きっとあの時捨てられたぬいぐるみ達の怨念に違いない、と……
ぬいぐるみにまつわるアレやコレ 鹿嶋 雲丹 @uni888
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます