みずタイプ同士の邂逅――水属性系男子・魚水海里の日常――

水涸 木犀

みずタイプ同士の邂逅 [theme2:ぬいぐるみ]

 仕事帰りにふと思い立ち、ポ◯モンセンターに足を運んだ。

 熱心なポ◯モンファンではない。ただ魚水海里うおみずかいりという名前のせいで「みずタイプ」と揶揄され続けた俺にとって、みずタイプのポ◯モンにシンパシーを抱くだけのことだ。

 今日ポ◯センに来る気になったのも、新作ゲームの発売に伴い、新ポ◯モンの人気ランキングの記事がネット上に公開されていたからだ。そこには「御三家のあのポ◯モンがまさかの圏外」というサブタイトルがついていた。


 ポ◯モンの御三家とは、主人公が最初に選ぶ三種類のポ◯モンを指す。選べる三匹はほのおタイプ、くさタイプ、そしてみずタイプと決まっている。

 件の記事の中では、三匹の御三家の中で、みずタイプの人気がいま一歩劣ると記載されていた。種族は違えど同じみずタイプの同士として、由々しき事態である。というわけで、不人気の理由を探るべく店舗へ足を運んだ次第である。


 店は思いの外混んでいる。人の流れに従って、ぬいぐるみコーナーまでたどり着いた。

 最新ゲームに登場する御三家のぬいぐるみが、目立つ位置に置かれていた。俺はみずタイプの御三家のもとへ真っ直ぐ歩みより、一体を手に取る。


 水色の羽毛を髪型のようにバシッと決めていて、ややナルシストな印象を受ける外見だ。この容姿で不人気となると、まるで高校デビューに失敗した陰キャのようだ。もしかしたらこのポ◯モンも、俺と同じ陰キャなのかもしれない。そう思うと俄然親近感が湧いた。手に取った一体を迷わずレジへと持っていく。


 自宅に帰り、購入したこがもポ◯モンのタグを外してベッドの端に置いた。地味な部屋に水色のぬいぐるみが置かれたことで、ベッド周りが急にポップな印象になる。俺はしばらくぬいぐるみを眺めてから、夕食を行きつけのバーで食べるべく再度外出準備をはじめた。

  ――帰宅したら、名前くらいはつけてやろう――

 そんな風に思いながら。

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