第11話
「とても──素敵なお式だったわね」
ルドルフ殿下が退室なさって、しばらく。私とヴァルは来賓席でルドルフ殿下とロザリア様の結婚式に参列して、今はもう帰る馬車の中だ。
ちなみに、来賓として紹介された時に驚く貴族の中から何人かのご令嬢と目が合った。
彼女達はルドルフ殿下の婚約者候補として出会ってから親しくしていて、連合王国からでも手紙で隠し事をしつつも近況報告をしていたような友人達。婚約が正式なものになったから、驚きつつも嬉しそうな彼女達にやっと報告出来る。嬉しいな。
こそりと呟いたのが聞こえたのか、ヴァルは私の耳に寄せるように囁いた。
「あれより素敵って言わせてやるからな」
「もう。張り合わなくっていいのに。でも結婚式が楽しみになってきたわね、早くおふたりのようにヴァルと幸せになりますって宣言したいもの」
「それは俺も。早くアリーシャを嫁さんだって言いたい。婚約者じゃなく」
くすくす、ふたりで笑い合う。
ルドルフ殿下とロザリア様はもう王都と近隣の領地に馬車で国民に結婚した事を知らせる為の凱旋をしていて、それを見送った参列者は夜に戻られるおふたりを待つ事になる。というのも、夜会で改めておふたりをお祝いをするからだ。
王城で待っている遠方の領地の貴族が多いけれど、私達のように数時間で領地に着く貴族は一度帰って屋敷でゆっくりする事が多い。まぁヴァルと私達は来賓だから王城に居ても良い待遇で待てるとは思うのだけれど、ヴァルが拒否した。
理由は簡単。私といちゃつけないから。
「ねぇヴァル、これだけ改めて言わせて欲しい事があるの」
くっつきながら私は言葉を発する。
なんだよ突然、と驚いた声色のヴァルが何だか可愛らしくて胸があったかくなりながら、ヴァルの顔を見た。
「──私を選んでくれて、ありがとう。私はこれからも大好きなヴァルに選んでもらえるように頑張る。それが私が選んだ事って、覚えててね」
伝わったかな。遠回し過ぎたかな。
ずっと貴方の傍にいさせて欲しいって、聞こえたかな。
不安な気持ちを抑えるように思わず胸に手を添えると、そんな私を包むようにヴァルが抱きしめてきた。
「当たり前だろ。俺はずっとアリーシャを、大切な家族を選びたい……だから、俺から離れないでくれ」
あったかい腕の中、私は頷いた。
──それから、十何年。
連合王国の王太子と王太子妃となった私達は臣籍降下……するはずだったのだけど、第二王子の婚約者のご令嬢が次々と辞退する事となり、まだ王族として公務を続けている毎日を過ごしている。
でも、本当はこっそり辞退した中のご令嬢のひとりから聞いているの。私の義弟は、ヴァルが次代の王として治めるべきだから、婚約者の決まらない不安定な状態で居させて欲しいと頭を下げたんだって。
だから私は、こう言った。
「──ねぇヴァル、私は貴方の選んだ道を一緒に選ぶわ」
ヴァルも彼も、ちゃんと話して道を選んで欲しい。
私はヴァルと一緒の道を選びたいと、そう思っているから。
選ばれなかった私は、もういない。
だって、選んでくれる人が、私も選んだ人が、いるから。
選ばれなかった私と選びたい幼馴染〜幼馴染には秘密がある〜 ろくまる @690_aqua
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