トリぐるみ殺人事件

真偽ゆらり

後日、裁縫上手の母の手により奇跡の復活を遂げる

「いったい誰がこんなことを……」


 リビング現場に散らばる大量の綿、無残にも胴体と泣き別れした獅子の頭とヒト型の身体。


「えっと、お兄ちゃん?」

「おい、今はクマぬい刑事と呼べって言っただろ」

「その子の名前はベッティちゃんなのに……」

「なるほど被害者の名前はベッティちゃん、と」

「違うもん。あの子はライオニール二等兵だもん」


 惨殺されたヒト型ライオンのぬいぐるみライオニール二等兵に近づくクマのぬいぐるみクマぬい/ベッティ


「ふむ。まだ綿汚れてない温かい。まだ犯行が行われてそれほど時間が経ってない」

「ベッティちゃんが探偵さんみたい」

「クマぬい警部!」

「ベッティちゃんなの!」

「うぅ……泣くなよ。じゃあ、クマぬい刑事の本名は熊縫ベッティで普段はクマぬい刑事って呼ばれてるんだよ」

「わぁ! ベッティちゃんに苗字ができた」

「それでいいんだ……」

「クマぬい刑事、凶器はなんですか!」

「きょ、凶器!? えっと……そうだな、ウマぬい君これを見たまえ」

「ユニホス」

「馬縫ユニホス君、被害者の傷口をよく見るんだ」

「ユニホスにも苗字が付いた! うん、見たよ」


 中の綿内臓が露わになっている獅子頭側の断面に角付馬のぬいぐるみ馬縫ユニホスが近づいていく。


「まるで強い力で引き千切られたように傷口の皮膚がボロボロだ」

「うん。シバキチがいつも首を咥えて振り回して遊んでたもんね」

「……それ言う?」

「何が? お兄ちゃん」

「まぁいいや。つまりだユニホス君。被害者のライ……ライオネル?」

「ライオニール二等兵です。クマぬい刑事」

「被害者のライオニール二等兵は首に強い力が加わった事で首が取れた殺された

「じゃあ最初のひが……ひ? 何て言うんだっけ、やられちゃったヒトって」

「被害者、な」

「それだぁ! 最初の被害者のトリぐるみはどうやってボロボロになった殺されたの?


 そう、被害者はもう一人一羽いたのだ。

 白い顔に黄色い嘴、茶色と黄土色の丸っこい体をした三本鶏冠のカクヨム三周年やレビューを書いて貰えたあのトリである。

 白い顔は少し毛羽立っているが綺麗な顔をしていた。だが青色の鍵括弧を模した模様の下、腹部はズタズタに引き裂かれところどころ中の綿内臓が飛び出ている。


「トリぐるみ? 被害者の名前はトリぐるみでいいのか?」

「うん。私のぬいぐるみさんじゃないし」

「ライオニール二等兵は?」

「ライオニール二等兵はペットの犬シバキチにあげたやつだから」

「まぁいいか。ユニホス君、この傷口を見たまえ。鋭利な何かで何度も何度も切りつけているだろう? 犯人は被害者に相当な恨みを持っていたはずだ」

「え~でも、ペットの猫オコメハはすっごく気に入ってジャレついてたよ?」

「……それ言う?」

「ねぇ、捜査ごっこ飽きちゃった。クマぬい刑事、早く犯人捕まえて~」


 ぶら下げられていたクマぬい刑事が持ち上がり、ユニホスの方を向く。


「いいでしょう。この事件、犯人は二人いたのです」

「人、かなぁ……」

「まずライオニール二等兵を壊した殺した犯人はシバキチ、君だね?」


 クマぬい刑事の右腕がシバキチの方へと向けられると、シバキチは前脚で顔を隠した。


「わぁ! シバキチ、いつの間にゴメンナサイを覚えたの?」

「いいぞシバキチ! 上手上手! はい、おやつな」

「お兄ちゃんが覚えさせたんだ」

「まあね。それで、トリぐるみをボロボロにした殺した犯人はオコメハさん……貴女だ!」

「さすがにオコメハはゴメンナサイしないか~」


 クマぬい刑事の右腕が向けられようがアメショの猫オコメハは知らんぷりである。


「まぁ、猫だし」

「事件解決だね! じゃあ次はオママゴトしよ」

「え~さっきやったじゃん」

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トリぐるみ殺人事件 真偽ゆらり @Silvanote

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