ぬいぐるみ

影神

お友達



私のお友達の。


大好きな食べ物は、ひなあられだった。



「ソコノオマエッ!


ソレヲ、ヨコセッ。」


「これが。


欲しいの?」


雛祭りの日に。


私は、一人で留守番をしていた。



雛人形を見ながら。


おやつに渡された、ひなあられを食べていた。


「ソウダ。ハヤクシロッ!」


「えぇ。


そんな事言うなら、あーげないっ。」


まだ小さかった私は、怖がりもせずに。


ソレと会話していた。



ソレ「ワッ、ワルカッタ。


タノムカラ。ソレヲ、クレナイカ?」


「どうしても?」


暇だった私は、意地悪をした。


きっと、寂しかったんだと思う。



ソレ「アァ。


ソンナニアルンダカラ。


ワケテクレ。」


私に喋り掛けているだろうぬいぐるみを。


椅子に上がって。ゆっくりと棚から下ろす。



それは。おばあちゃんが作った、ぬいぐるみだった。



「何色が欲しいのっ?」


ぬいぐるみを座らせ。顔を近付ける。


ぬいぐるみ「アカダッ、


アカヲ。ヨコ、


クダサイ。」


「お腹空いてるのっ?」


ぬいぐるみ「スイテハナイ。」



「あーん。」



赤い色。


ピンクの色をしたひなあられを。


私は、ぬいぐるみの口へと近付けた。


「美味しい?」


口に押し付けたひなあられは、何処かに消えた。



ぬいぐるみ「モット、クレルカ?」


「えー。


どうしようかなぁ、、」


ぬいぐるみ「ソレヲタベナイト、ウゴケナイ。」


「えーっ!


動けるのっ!?」


ぬいぐるみ「イカナキャ、イケナイトコロガアル。」


「、、戻ってくる?」


ぬいぐるみ「モドッテキテホシイノカ?


、、コワク。ナイノ、カ?」


「怖くないよっ。


だって。可愛いじゃん!」 


ぬいぐるみ「カワイイ、、


ハッ、ハッハハハ。」 


「はっ、はっははは。



じゃあ、今日からお友達ねっ?」


ぬいぐるみ「オトモダチ。


ワルクナイ、ヒビキ、ダ。」



この日。


私のおばあちゃんが亡くなった。



ぬいぐるみは、おばあちゃんのベッドに居た。



今日は雛祭り。



おばちゃんにはお線香。


ぬいぐるみには、ひなあられをあげる。


「あーんっ、、」











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ぬいぐるみ 影神 @kagegami

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