くまさんより本当はパンダさんが欲しかった

クリスマスプレゼントのくまさん

 サンタさんにもらった、くまのぬいぐるみ。


 大きな、おおきな。


 パパとママはニコニコしてた。


 あたしもうれしかった。


 パパとママがよろこぶから。


 でも、ちがう。


 あたしがほしかったのはパンダさん。

 どうぶつえんの人気者。

 みんなにかこまれて、みんなを笑顔にする。


 くまさんと似てるけど、ちがうの。

 くまさんも大きくてたくましいけど、人気者のパンダさんのほうがいいの。


 でも、いえなかった。


 くまさんは部屋のすみっこ。


 あたしを見てニコニコしてるけど、あたしはくまさんに笑ってあげられなかった。


 パパとママは、おそくまでおそとでおしごと。


 あたしはくまさんとおるすばん。


 よる目がさめちゃったとき、パパがいた。


 うれしかったけど、あんまりにもねむいから起きられない。


「パパ……」


 手だけのばしたら、ぎゅってにぎってくれた。


「くまさん、ありがとう。娘をいつも守ってくれて」


 パパはそっと出ていくとき、くまさんの頭をやさしくなでていた。




 あらしのよる。


 ビュウゥ、ビュウゥ!

 ゴオゥ、ゴオゥッ!!


 かぜがさけんでる。


 ガタガタ、バタバタ!

 ドタドタ、バンバン!!


 あめはまどもカベもたたいてる。


 こわい……。

 たすけて……。


「パパぁ……。ママぁ……」


 あたしはまっくらな部屋のすみで泣いていた。


 オバケがくる。


 うそじゃない。本当よ。


「じゃあ、くまさんに守ってもらおうね」


 ママがまえにそういったら、くまさんはやっぱりニコニコ笑ってた。


 くろいオバケは、あたしがかくれていてもさがしだす。


 人気者のパンダさんはいない。


「たすけて……」


 オバケがくらやみで、ニッ、ニッ、って笑ってる。


「たすけて! くまさん!!」


 あ……。


 くまさんがオバケに……。






「あらあら。くまさん、ケガしちゃったの?」


「あたしを守って……」


「? じゃあ、お医者さまに見てもらわないとね」


「うん。ぜったい、治してもらってね!」


「くまさん、よっぽど大事なのね」


「大好き!!」

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