ぬいぐるみが見つめる先に

鳥辺野九

ヒトの形をしたぬいぐるみをね


 これは一般的な霊の見分け方のお話です。


 学校の一年後輩に、いわゆる霊が見えてしまう子がいるの。まあ仮に「見える子ちゃん」って言うね。普通にかわいい女の子だよ。ちょっと無口で根暗だけどね。


 で、見える子ちゃんが言うには、調子がいい時(言うなれば悪い時?)はそれがホントの霊なのか生きてる人間なのか見分けがつかないくらいくっきりリアルに見えるんだって。


 私みたいな霊感ゼロ人間がホントの霊と遭遇しても、その霊が見せたい姿がその場で再現されるだけらしいよ。


 後になってアレって何だったんだろうって思い返しても、どうしても顔が思い浮かばないとかどんな表情してたか思い出せないとか。それが霊感ゼロ人間の霊体験よ。


 それでね、見える子ちゃんはある方法でホントの霊か人間かを見分けるんだって。その方法はね、ぬいぐるみを使うらしいの。


 何でもいいから赤ちゃんサイズのヒトの形をしたぬいぐるみを用意する。で、そいつに向けてやる。ヒトの形って、ホントの霊にとっては居心地がいい形なんだって。


 もしもそいつが普通の人間だったら、ぬいぐるみは何の反応もしないでくたっとしたまま。もしもホントの霊だったら。ぬいぐるみの中に入ろうと寄ってくる。すーって。


 中に入ったホントの霊はしばらくの間は悪さもしないし、何だったらそのままポイしちゃえばぬいぐるみは動けないから逃げることもできる。


 でね、見える子ちゃんが言うには、本当にヤバくて怖いのはホントの霊でも生きてる人間でもなく、ウソの霊なんだって。ウソの霊は超ヤバいらしい。見える子ちゃんも走って逃げるくらい超ヤバげ。


 ウソの霊の見分け方はね、ちょうどここにぬいぐるみがあるからこの子で説明するね。ウソの霊は、……あれ? この子、何かあなたのことじぃっと見つめてない? この子、あなたをじぃーっと見てるよ。何で?


 ホントかウソか、あなたも体験すればわかります。

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