第25話 Rondo=Bolero=Daviwood
多胡さんの弟のLeeという人がいる。彼は多胡さんの双子の弟という立場で活動していたみたいだけど、実際は多胡さんよりも10歳近く年下であたしたちの同級生だった。
ずっと知らずに過ごしていたけれど、基実くんの事件が明るみになってからようやく誰なのか思い出すことができた。
中学時代の話。あたしと帝都がどうして離れ離れにならなければならなかったかの真実。
基実くんと陸ちゃんは、、、Leeの本名は多胡陸という、、、同じ3組、あたしと帝都は同じ1組だった。
キャンプファイヤーの夜にあたしを見つけた基実くんはあたしの人質先の祖母の家の坂の下に住んでいた。基実くんとあたしは小学校が違う。だから人質先の祖母に基実くんのことを聞いてみたことがあった、祖母は言葉を濁した。
借家を借りるような余所者とはなるべく関わらない、それが田舎の地主の考えみたいだった。
基実くんは何もしなくても目立った。勉強もスポーツもいつも一番だったから。
だからあたしが基実くんに知られているなんて思いもしなかった。
陸ちゃんとも小学校は違った。でも朗らかで優しい人だったからクラスも性別も違ったけれど仲良くなって文通をはじめた。折り方も工夫して。陸ちゃんとは何でも話せた。かわいい丸文字は女のあたしが真似したいような雰囲気もあった。
帝都とはずっと幼なじみで、小学校5年生の時に恋をした。中学校に進学してももちろんあたしは帝都のこと以外はみんな不細工に見えるほど帝都が大好きだった。基実くんがとても人気であることは女子だからよく知っていたけれど、それよりもあたしは帝都とイチャイチャしているほうが楽しかった。いつか付き合って、一緒に上京して、結婚なんかどうでもいいけれどいっしょにいたいと当たり前のように思っていたし、そういう日が当たり前のように訪れると信じていた。何も疑わずに。
あたしが文通をしていたのは陸ちゃんじゃなくて基実くんだったこと、基実くんがあたしと付き合っていると嘘の噂を流したこと、それによって帝都が誤解してあたしを避けたこと、基実くんはあたしと付き合っているという嘘の噂を流した事件のせいで地元にいられなくなってしまったこと、地元にいられなくなったから陸ちゃんのお兄さんを頼って東京に16歳で上京して仕事をはじめたこと、その時にお世話になったのが三閉免疫症候群だったこと、三閉免疫症候群の人々に帝都があたしをいじめていたと嘘を伝え続けたこと、三閉免疫症候群の人々は基実くんの話を信じて帝都を集団的に笑い物にしたこと、そしてそのことが明るみになって三閉免疫症候群は不全として生きなければならなくなったこと。
三閉免疫症候群の人々は基実くんにけじめをつけさせようとしたけれど、基実くんは逃げてしまったのだそうだ。匿ったのは無論、亜種白路。双方の長年の確執を間近で見ていた基実くんはそこしかないと裸足で逃げ込んだのだそうだ。三閉免疫症候群の情報を全て教えたら助けてやるという条件だったらしく、基実くんは二つ返事で了解した。
あたしは基実くんの胸にナイフを突き立てて言った、「どうするの?自殺する?それとも選べると思ってる?」
基実くんはあたしの腹に銃弾を撃ち込んだ。銃で撃たれるのはこれで2回目。
わかっていた。あたしは基実くんに殺されるつもりでナイフを突き立てたのだから。
「終わりにしたかったから」
腹から流れる鮮血が新しいE冠の源となっていく。LustrevとCherseaがそれぞれの血を混ぜていく。
ついにMjustice-Law家の悲願が達成されると思うと、あたしは静かに目を閉じた。
Rondo=Bolero -Mjustice-Law家の肖像- 恩賜芍薬/ Grace Peony(♂= @falg-book
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