第8話 少女たちの新生活

 「【装飾インテリア】」


 猫人族バステトのニナは魔法適正持ちであり、代々調度品のデザインや装飾を生業としていたらしく先天的に固有魔法である【装飾インテリア】を行使していた。


 「こんな感じでどうかなぁ?」


 獣人族たちを匿うために屋敷の地下空間を拡張していたのだが、その装飾や家具作りをニナが手伝ってくれていた。

 ちなみに家具のための原材料を取りに行くのはエリオットの役目だった。


 「シックな色合いで、センスがいいね」

 「そう言って貰えると嬉しい」


 ニナに原材料を渡すと、それを魔法で加工してくれるのだ。

 もう家具を取り扱う店が倒産しそうな勢いで、部屋を装飾していく。


 「でもこれだけ作ってるのに魔力が枯渇しないなんて凄いね」


 魔法適正ありとはいえ、常人の魔力量の上限はそう大きくない。

 魔王軍勢力討伐のためにエリオットと行動を共にした魔術師ならまだしも、ニナの魔力量は常人のそれだ。

 ゆえにエリオットは、次々と室内を装飾していくニナに驚きを隠せなかった。


 「この魔法って慣れてしまえば魔力消費は少ないの」

 「どういうこと?」


 エリオットの質問に、ニナは小さくカットされた木片に魔法を行使した。


 「【装飾インテリア】」


 するとものの数秒で木片は光を放つとチェス盤と駒とに姿を変えた。


 「材料の加工過程と想像した物体とを強く結びつけられれば、魔力の消費は抑えられるの。さらに加工過程が簡潔であればあるほど少なくできるからコツは慣れかな」


 ニナが言うには培われた経験が生きるということらしかった。

 だが創造魔法と原理の変わらないそれを無制限と言えるほどまでに使えるニナの影の努力にエリオットは、感嘆させられた。

 

 「ありがとう、これからも頼りにさせてもらうよ」

 「これで役に立てるのならいくらでも働くよ!!」


 エリオットに頼られて嬉しいのかニナはそう意気込むのだった。


 ◆❖◇◇❖◆


 「そうそう、今のタイミングです!!今日のうちに身体で理解してください」


 エリオットから貰った魔剣クレシューズを片手に『死の森』の中でラニアは、獣人族を鍛えていた。


 「そう言われても私たちで覚えられるかなぁ……」

 「戦闘職じゃないですし……」


 白緑色の空のもと、不安そうな表情で木剣を振るう少女たちにラニアは容赦が無かった。


 「恩に報いたいというのは私たちの自発的な意志です。そんなんじゃいつまで経ってもエリオット様の役には立てませんよ!!」


 ラニアの言葉を受けて少女たちは眦を決した。


 「それもそうだね……私たちだけでも国軍を相手に出来るようにならないと!!」

 「うんうん、頑張って敵をぶっ倒してエリオット様に褒めて貰いたいゾ!!」


 そして彼女たちはエリオットの知らないところで、高い目標に向けて鍛錬を重ねていた。

 そんな少女たちを満足気に見つめたラニアは、普段エリオットに見せることの無い聖銀のロザリオをそっと胸に押し抱いて


 「これも運命なのかもしれませんね、お姉様……」


 と、誰にも聞こえないような声音で遠くを見つめて言うのだった。


 「どうしたのですか……?」


 傍へと狐獣人のアルバの声掛けに、意識を現実へと引き戻されたラニアは、

 

 「なんでもないですよ。それより、今から『死の森』で外縁部で実戦です!!」


 と、鬼教官になるのだった。

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奴隷少女と始める美少女秘密結社ライフ〜気付いたら秘密結社のボスになっていたんだが?〜 ふぃるめる @aterie3

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