第7話 少女たちの決意
「お前たちはどうする?」
エリオットが生き血を吸って爛々と輝く魔剣ダーインスレイヴを残った男たちへと向けた。
『おまえが和解を求めるにしても、もはや遅すぎる。私がもうダーインスレイヴを抜いてしまったからだ。この剣はひとたび抜かれれば必ず誰かを死に追いやる。その一閃は的をあやまたず、また決して癒えぬ傷を残すのだ』と伝承に書き記された魔剣ダーインスレイヴは、しかしその存在を秘匿されていた。
エリオットがそれを持っている理由はドワーフたちの住まう地下都市を、魔王軍勢力から守ったからだった。
その礼として強大すぎる力ゆえに代償として血を欲する剣を譲り受けたのだ。
「ば、化け物だ!!」
「こんな奴の相手は、白金貨を貰ったって安すぎる!!」
商館に雇われていた傭兵たちは、口々に好き勝手言うと逃げ出した。
残ったのは教会に仕える修道会騎士たちだけだった。
「権益か癒着か……あるいはその両方かは知らないけど、まぁどっちでもいいや」
エリオットがダーインスレイヴを一振りすれば、赤黒い光が空間を引き裂いた。
「うぐっ!?」
「カハッ!?」
手近の二人が血飛沫をあげて倒れた。
商館の白い壁を血潮が赤く染めあげ、鉄臭い匂いが辺りに充満した。
「チッ……引き上げだ」
隊長らしい男の人声で、修道会騎士たちは部屋を出ていった。
その足音が消えるまでエリオットはダーインスレイヴを油断なく構えていたが音が消えると血糊を拭って鞘へと納めた。
「終わったみたいだね」
いつもの優しい表情に戻ったエリオットは、ラニア達へと向き直ると転移魔法陣を展開させた。
「今から見る魔法は他言無用にしてね」
そう念押ししてエリオットは【
◆❖◇◇❖◆
「私たち決めました」
翌朝、商館から助け出した獣人たちがエリオットの居室を訪ねた。
彼女たちを代表してそう言ったのは、
「決めたって何を?」
転移魔法で帰還したその日、エリオットは助け出した理由をラニアと共に少女たちに話した。
謂れのない罪を被せられた獣人族たちを守るために宗教も国家も敵に回すという決意を固めたことを―――――。
「私たちはエリオット様に助けていただきました。その恩に報いるために、何もかもを投げ捨てる覚悟を決めたんです!!」
言葉を尽くして
「そっか……でもこれだけは覚えていて欲しい。僕が守るべき獣人族には君たちも入ってるっことを。だから自分を一番大事に考えて欲しい」
頑なな決意に届くようエリオットもまた真剣に向き合うのだった。
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