悩みの本屋

夕暮 春樹

第1話

 私がバイトをしている本屋さんは、カフェと本屋さんが一緒になっていて、買った本をお店でゆっくり読むことができる。そんな本屋にはいろんなお客さんがやってくる。カフェだけを目的に来る人もいれば、本だけを買いにくる人もいる。でも、お客さんのほとんどが店長にお悩み相談に来るのだ。

店長はいつも、相談してきたお客さんにあった本を薦める。すると本を読み終わったお客さんは晴れた顔でお店を出ていくんだ。

そんな本屋に今日も悩みをもったお客さんがやってきた。

 黒いスーツに眼鏡をかけた男性だ。男性はお店に入ると少し本屋の中を見てまわってから、特に本を買うことなくカフェスペースの一席に座った。


「お客様、どうかなさいましたか?」


男性は店長に話しかけられて少し驚いたようにしていた。


「申し訳ありません、少し悩んでいるように見えましたので。よかったら私に話してみませんか?少しは楽になれると思いますよ。」

「そうですね。実は、最近仕事でミスを連発してしまって、、、、」

「そうなんですね。そういう時は少し休んで心をリフレッシュさせるのが一番です。よかったらこの本を読んでみてください。」

「本ですか?」

「はい。この本は私のおすすめでして、どんなミスをしても大丈夫って元気が貰えるんです。この本貸し出すのでよかったらどうぞ。」

「ありがとうございます。」


男性は店長から本を受け取ると、その場でコーヒーを頼んで本を読み始めた。

3、4時間ほどで読み終わったようで、男性は店長のもとに本を返しにいっていた。


「この本、ありがとうございました。」

「いえいえ、悩みが晴れたようで何よりです。」

「はい!おかげさまで元気がもらえました。これからまた頑張ってみようと思います。」

「そうでえすか、応援してますよ。」

「ありがとうございます。せっかくなんでこの本買うことってできますか。」

「はい、ではカバーをお付けしますね。」


本を買った男性は晴れた顔をして、お店を出ていった。

 さて、次はどんな悩みをもったお客さんがこの本屋に来るのでしょうか。

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