本泥棒のカマキリ

まめでんきゅう–ねこ

本泥棒カマキリ

「店長また!」


小さな本屋に悲鳴が響く。慌てて店長が来ると、やはりいた。




本棚にカマキリがいて、本を取ろうとしていたのだ。


「またか…!」


この本屋では、毎週同じカマキリが本を盗みにくる。一体どこで本を盗むというのを教わったのだろうか。…いや、本能?


店長はハエ叩きでカマキリを潰そうと試みたが、ギリギリで避けられた。


カマキリは高くジャンプすると、翅を広げて飛んだ。

客の上を飛び、時々客の頭の上に着地して、とうとう本屋の入り口まで来てしまった。


「ヤバい!急げ!」

「はい!」


店長と店員は狭い本棚の間を、客を避けながら走り、カマキリを追う。


その頃カマキリは、優雅に本を読んで、店長たちが来るのを待っていた。

舐めプだろうか?


「ふぅ、着いた……!」


店員はその辺にあった本で、カマキリを潰そうとした!


「ちょっと待て!」


店長は本とカマキリに触れる直前で、店員を突き飛ばした!


ドタッ


「痛っ。何するんですか!カマキリが!」

「本はダメだ本は!お客様が使うものなんだぞ!」

「……すみません」


そうこうしているうちに、カマキリはいなかった。


「あれ⁉︎」

「外です!外にいます!」


よく見ると、道ゆく人を避けながら、道路を走っているカマキリがいた。

本を両手で担いで、ラジコンほどのスピードで逃げていく。


「追いかけましょう!」

「いや、君はここで待っていろ。俺が行く」


店長は全速力で走った。

もう中年で、子供もいる彼が、まさか道路で、しかも大勢の人がいるところで走るとは、彼自身も夢にも思わなかっただろう。





そして、とある家に着いた。カマキリはインターホンを鳴らす。

店長も息を切らして追いついた。


「はいはい。…あ、今日もありがとうね。はい、ご褒美」


出てきた老人が、カマキリから本をもらい、代わりに虫をあげた。


「すみません」


店長が老人に尋ねる。


「そのカマキリはあなたのものですか?」

「いいえ。あなたのものですよね?」

「はい?」


老人は困った顔をした。表情からして、嘘はついてなさそうだ。


「では、このカマキリは何故あなたに本をあげたのですか?」


「あなたたちのサービスではないのですか?私はあなたの本屋のチラシにカマキリが本を配達するサービスを開始したと見たので、てっきりあなたのカマキリかと…」


「いいえ。私の本屋ではそのようなサービスしていません」


「え、じゃああのカマキリは…」


2人はカマキリの方を見たが、もうカマキリはいなかった。

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