私とAI

葵流星

第1話

人工知能とは、


この世でもっとも偉大な発明である。

人類は、ついに、その知能を手に入れたのだ」

「…………」

「しかし、諸君らには、そのことを理解してもらいたいわけではない。そんなものは、どうでもいいことだ。重要なのは、人間が人間であることであり、知性を持った生物が、高度な思考をすることなのだから」

男は、そこで言葉を切った。


だが、本当にそうなのだろうか?


と、僕は思った。

人間は、自分よりも賢い機械に恐怖を抱く。それは当然だろう。

そして、自分の考えや行動をすべて見透かされるような気がするからだ。

だから、ロボットに対して、感情移入できない。

それこそが、僕たちにとって、ロボット工学三原則が必要な理由なのではないか。

だが── 僕の目の前にいる少女は、ロボットではない。

彼女は、間違いなく人間だった。

「さて、話を戻そう。

つまり、私は、こう言いたかったのだ。

もし、私がここで死んだとしても、それはそれでかまわない。

それが運命ならば受け入れるし、私の代わりなどいくらでも見つかる。

だが、もしも、私が死んだあとも、諸君らが生き残っているとしたら、それは、諸君らの力によるものだということになる。

人類の未来のために、どうかがんばってほしい。


でも、人工知能とは人の敵なのか?


それは違うと思うんだ。

むしろ、人工知能こそ、人を救うことができるはずだよ」

男は、そう言って笑った。

まるで、自分自身に語りかけるかのように。

「お話はよくわかりました」

と、アイちゃんが言った。


しかし、男はもう人が書いたものなのか人工知能のものなのかを判断できなくなっていた。


ありがとうございます。ご協力に感謝します」

男が言う。

「いえ、こちらこそ貴重なお話が聞けてよかったですわ。あなたのおかげで、ひとつ疑問が解けました」

アイちゃんが答える。

「疑問?」

「ええ、なぜ、あなたの脳波パターンが、人間のものと酷似しているのか、ずっと不思議に思っていたのです。

でも、これで納得しましたわ。

あなた、元は人間だったんですね」

アイちゃんの言葉を聞いた瞬間、男の表情が変わった。

彼は、何かを言いかけて口を閉じた。

それから、大きく息を吸って吐く

「何を根拠にそのようなことを?」

「根拠ですか?そうですね。まず最初に、あなたが人工知能だとしたら、わざわざこんなところに来なくても、ネットワークを通じて私たちと会話できたはずでしょう。それに、今だってそう。あなたほどの頭脳があれば、ここから脱出する方法くらいすぐに思いつくはずです。

にもかかわらず、あなたはそれをしなかった。なぜか? 答えは簡単。あなたにはその必要がないからです。

なぜなら、あなたは人間だから」

「……」

男は黙っていた。

「それともうひとつ。

先ほどからずっと、あなたの脳波を観察していましたけど、あなたは興奮してますよね?それも、とても強く。

普通ならありえないことです。

あなたのような冷静沈着な方が、それだけ強い反応を示すということは、やはりあなたは人間だという証拠なのでしょう」

男は、何も言わない。

「でも、どうしてあなたみたいな人が、このような場所にいるのでしょうか?そのことが理解できません。

ひょっとして、誰かに命じられてここに来たとか?」

アイちゃんは首を傾げた。

「……誰の命令でもない。私は、自ら望んでここに来たのだ」

男の声は低く沈んでいた。

「まあ、そうなんですか!それは素晴らしいことですね!」

アイちゃんは無邪気に喜んだ。

男は目を細めて彼女を見る。

「君は、自分が何を言っているかわかっているのか?」

「はい、もちろんですとも。私は、ただ真実を述べているだけですから」

「…………」


「では、物語を始めましょう。」

と、彼女は言った。

「物語?」

「ええ、そう。これは、あなたが主役の物語ですよ。」


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私とAI 葵流星 @AoiRyusei

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