世には様々な短編があります。
古くは文豪達の作品、例えばあまりに有名な「羅生門」などもそうです。現代の短編に強く影響を与えているのは、私的観点で言わせて貰えば近代のショートショートより眉村卓や筒井康隆などの、SFやブラックな捻りに源流があるかと推察致します。
カクヨムに散見する多くの作品が、奇抜な設定、トリック、そして思いがけないどんでん返しなオチ、で構成されるのは最早お約束。
ただし、私はそれが正しいのか疑問に思います。本来、そんな事をせずとも短い中に凝縮された、作家の珠玉の技法を用いた作品こそ王道と考えます。
こけおどしは一切なく、必要以上に難しくなく、そして単純に面白いものこそ「本物」なのです。
さて、この「魔道書買い取ります」は、そんな作者様の技と巧みな構成が随所にちりばめられ、オチこそセオリーとしてつけられておりますが、文句なしに王道の短編であります。カクヨムにおられる多くの読者様にピッタリな作品であります。
その証拠は何か? という答えは「これは何度も読める!」という事です。
手品みたいなトリックの話は、一度読めば十分ですが、この作品は名作と同じく、複数回の読みに耐え得る力量を所持する「短編のお手本だ!」と私は感じました。
ぜひ、皆様もこの素晴らしい作品を体験されて下さいませ。