第34話 お肉

「これで、よしと」


 無事に脱臼していたアズルマイカの肩をはめ、絡まったテルトナとシジーからスライムの粘体を取り除く。


「まずは現状の確認をするか」

「ん。周囲の警戒、しとく」


 俺とシジー、テルトナにシスター・リニが通路の隅で車座になるように座る。

 アズルマイカはシスター・リニの後ろに立っている。

 アズルマイカを紹介してもらう。言葉は濁していたが、彼女はどうやらシスター・リニの護衛らしい。微妙な顔をするテルトナとシジー。


 まあ、仕方ない。俺たちが雇われたのが聖遺物の調査をするシスター・リニの護衛なのだから。明らかに、依頼内容が被っているのだ。


 手早く情報交換を進める。


 ──状況は厳しい。それでも今のところ皆、無事だ。これもシストメア様の加護のおかげだ。ありがとうございます、シストメア様。


 俺は内心、感謝の祈りを捧げる。


「さて、今いる場所ですが……」


 テルトナのその声に被せるようにミリサリサから警告の声。


「敵、1。近づいてきている」


 ざっと立ち上がり警戒の体勢をとる俺たち。


「……あれは、ホワイトキャメル。どうやらここは迷宮の下層で間違い無さそうですね。しかしついてますね。一番、御しやすいホワイトキャメルが、しかも一体で出てくるなんて」


 テルトナの言う通り、敵は真っ白なラクダ風のモンスター。下層にいることが確認されている種類だ。

 そして何よりも、その肉は食料になる。さらにそのコブには大量の水分が含まれており、飲料可能らしい。


 最低限の食料しか持参していない俺たちにとってはこの上ない獲物といえる。


「先行する! 援護を」


 頑強な肉体持ちであり、この中では一番レベルの高いのは俺だ。皆の盾になるつもりで、俺は両手にナイフを構えると、前へと飛び出した。


 ◆◇


「ばう」

「焼けたぞー」


 俺は倒したホワイトキャメルの肉をガルナタタンの魔法の炎で焙っていた。

 皆、無言。淡々と食べている。


 俺も自分の分を口に運ぶ。


 ──うむ、コメントに困る味だ。油たっぷりで悪くはないが……


 俺も黙々と口を動かす仲間入りをはたす。


 ホワイトキャメルにトドメをさしたシジーと、アシストをしていたミリサリサはレベルが上がったようだった。

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