殺し屋が転生したら、花屋さんになった件

ダンサー

第1話

「お前はもう詰んだ!」


警察に銃を向けられ、袋小路に追い詰められていた俺は、もう逃げ道がないって悟った。


今回の任務は失敗だった。


相棒が殺られ、逃げられずにいる俺。


「逃げるのはもう無駄だ、さっさと投降しろ!」


投降?面白いこと言うんだね。お前らに降参したところで、組織の人間に許されると思うか?警察に捕まった時点で、もう組織の人間じゃなくなるんだ。組織の秘密を知った部外者は、どんな処分が待っているのか、お前らは知っているのか?


どの道死ぬなら、せめて自分の死に方を決めたい。


手に持っている手銃には弾丸一発しか残っていない。


俺は銃口をこめかみに当てる。


「おい!何をする気だ⁉︎ 」警察が大慌ててそう叫んだ。俺を捕まえて組織に関する情報を問い出す計画が水泡に帰すみたいに。


時間が停止したように、狭い袋小路にいる誰もが動こうとしなかった。


俺は隅っこにポツンと咲いた一輪の花に目をやる。


紫羅欄花スットクだ。


俺はふと相棒の彼女の姿を思い出す。


しゃがみ込んだ彼女の姿があった。俺を見上げて、道端に咲いた紫羅欄花スットクを指した。


紫羅欄花スットクの花言葉って知っている?愛情の絆なの。」そういって、俺に微笑んだ。


あれは、俺にとって世の中で一番美しい笑顔だった。


俺は思う。


もし来世というものがあるなら、俺はもう一度彼女と出会いたい、もう一度彼女と愛情の絆を結びたい!何の争いもない世界、何の束縛にも縛られない世界で!」


最後に俺は覚悟を決めた。


引き金を引いたと同時に、俺の目がくらんだ。痛みも感じずに、意識が遠のいていく。


******


「痛いっ」


頭に痛みが走った。俺は思わず手のひらで片方のこめかみを覆った。


「仕事中に寝るんじゃないわ、春樹はるき!早く手伝いなさいよ!」


俺は声がしたほうを向く。そこには女一人がいた。腕を組んだまま、俺を睨みつけていた。


「水揚げを手伝うと言いながら、途中で寝ちまうなんて……何度起こしても起きないから、手で叩いてやっと起きてくれたわ」そう言ってから、女はぷいっと俺に背を向けて、作業に戻った。


確か、さっき何かが俺の頭を打った気がするが、この女の手だけなのか?


俺は自分の状況を確かめる。


俺は今、椅子に座ったまま、左手に挟み、右手に花束、水揚げの作業をしているところだったが、途中で寝てしまったそうだ。


さっき何かと戦っていた気がするが。その何かはいったいなんなのか?それとも、俺はまだ寝ぼけていて、夢であったことを現実の出来事と勘違いしちゃっただけなのか?


俺は現実にいるのか?現実は何?


******


俺の記憶は、いくつかのピースが抜けている。今は見つからないが、この先の旅につれて、それらのピースを手繰り寄せつつある。すべてのピース取り戻した際には、

きっと彼女ともう一度出会い、幸せを取り戻すのだ。
















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殺し屋が転生したら、花屋さんになった件 ダンサー @tinydancer

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