新感覚の本屋?
三国洋田
第1話 本が売っていれば本屋
俺の家のすぐ近くに『新感覚の本屋』という店名の本屋ができたらしい。
新感覚の本屋ねぇ、何が新感覚なのだろうか?
興味が湧いてきたなぁ。
ちょっと行ってみようか。
店の前にやって来た。
ふむ、外観は普通だな。
たいして大きくもない、ただのビルだ。
『新感覚の本屋』と書いてある壁面看板が、ちょっと目を引くくらいだな。
まあ、そこはどうでもいいか。
入ってみよう。
えっ!?
なんだこれは!?
中には、テーブルと椅子が並んでいた。
まるでレストランのようだ。
これはいったいどういうことだ?
ここは本屋じゃないのか?
本なんてないぞ?
ん?
なんだか小腹が空いてきたなぁ。
せっかく来たんだし、何か食べていくか。
俺は席に着き、メニューを見てみた。
ナニコレ!?
本型パンに、本型ハンバーグに、本型ケーキに、本型寿司だと!?
メニューには本の形をした、さまざまな料理の写真が並んでいた。
これが新感覚の本屋ってことなのかよっ!?
く、くだらない!
くだらなさすぎるぞ!!
まあ、いいか。
とりあえず、注文しよう。
何にしようかな?
この本型ハンバーグというのを頼んでみようか。
本型ハンバーグがやって来た。
大きさはA5くらい。
厚さは三センチくらい。
雑誌のようなサイズだ。
こいつはデカいな。
食べ応えがありそうだ。
では、食べてみるか。
いただきます。
味は普通のハンバーグだな。
なかなか美味しいぞ。
食べ終わり、料金を払った。
さて、帰るとするか。
おや?
どうやら上の階にも何かがあるみたいだな。
もしかして、そっちに本があるのかな?
ちょっと行ってみるか。
二階にやって来た。
そこには、色取り取りの本が棚に並んでいた。
大量に置いてあるなぁ。
ようやく本屋って感じになったな。
あれ?
形は本なのだが、なんか質感が違うような気がするぞ。
なんだあれは?
もっと近くで見てみようか。
これは紙ではなく、布っぽいもので作られているみたいだな。
ちょっと触ってみるか。
この感触、中に綿が入っているみたいだな。
これはもしかして……
本のぬいぐるみなのか?
ええ……
なんでこんなものが売っているんだ?
需要あるのか?
訳が分からんなぁ。
こんなのいらないし、もう帰るか。
おや?
まだ上に何かあるみたいだな。
行ってみるか。
三階にやって来た。
そこにも、色取り取りの本が棚に並んでいた。
だが、ここのものも質感が布のように見える。
ここでもぬいぐるみが売られているのか?
「いらっしゃいませ」
ベテランっぽい男性の店員が声をかけてきた。
「いかがですか? 当店の本型枕は? 今なら、お安くなっておりますよ」
「本型枕!? ぬいぐるみじゃなくて、枕だったのですか!?」
「はい、ぬいぐるみは二階にあるものだけですよ。ここにあるのはすべて枕となっております」
「そ、そうなんですか……」
なんで本型の枕なんて作ったのだろうか?
本を読んでいると眠くなる人のアイディアなのかな?
その後、店員に勧められまくって、枕をひとつ買ってしまった。
あの店員、商売上手だなぁ。
さて、もう帰るとするか。
お?
まだ上があるのかよ。
ちょっと行ってみるか。
四階にやって来た。
そこには、服が並んでいた。
なんで服が売っているんだ?
本とは関係ないだろうに?
「いらっしゃいませ」
若い男性の店員に声をかけられた。
「いかがですか? 当店の本で体を守れる服は?」
「えっ、なんですか、それは!?」
「この服は、内側に本を仕込めるようになっています。これなら刃物で刺されても生きていられますよ」
「そ、そうなんですか……」
おい、何を言っているんだ、こいつは!?
なんでそんなのが起こることを想定しているんだ!?
怖すぎだろ!?
それに、防刃チョッキがあるだろ!?
わざわざ本で守らなくても良いじゃないか!?
その後、店員に押し切られ、服を買ってしまった。
あいつも商売上手だな。
さて、帰るか。
あれ?
まだ上があるのかよ。
行ってみるか。
五階にやって来た。
そこには、大量の丸くて赤い押しボタンが棚に並んでいた。
なんだここは?
なんでボタンが、こんなに並べられているんだ?
訳が分からんなぁ。
「いらっしゃいませ」
若い女性店員に声をかけられた。
「お客様、当店の本物の自爆ボタンはいかがですか?」
えっ!?
聞き間違いか!?
今、自爆ボタンと言ったような気がするぞ!?
とりあえず、もう一度聞いてみよう!
「あの、よく聞こえなかったのですが、今なんと言ったのですか?」
「本物の自爆ボタンはいかがですか?」
こいつ、確かに自爆ボタンと言ったぞ!?
聞き間違いじゃなかった!?
聞き間違いであって欲しかった!!
「じ、自爆ボタンですか…… あの、それは、なんですか?」
「名前通り、押すと自爆するボタンですよ」
「じょ、冗談ですよね!?」
「いいえ、違います。これは本物ですよ。なんと言っても、ここは本物の自爆ボタン屋、略して『本屋』ですからね!」
「はぁっ!?」
な、なんじゃそりゃぁっ!?
本屋って、そういう意味だったのかよっ!?
その後、店員に押し切られ、自爆ボタンを買ってしまった。
あの女性店員、商売上手すぎだろ。
つい、こんな訳の分からんものを買ってしまったぞ。
ところで、これを押すと、どうなるのだろう?
爆発音が鳴るのかな?
ちょっとやってみようか。
俺はボタンを押してみた。
えっ……
そこで俺の意識は途絶えた。
そして、その日、地球は爆発した。
新感覚の本屋? 三国洋田 @mikuni_youta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます