おまけ

【NG集】


<第2話 父が箱からハエ叩きを取り出すシーン>


 父さんは巻物の隣にあった縦長の箱を出してふたをとった。中には、銀色に輝く、研ぎ澄まされたボディ……ではなく、真っ黒に変色した残念なハエ叩きが入っていた。


「わっ、何これ!?」


「長いこと放っておいたせいだな。虹治、アルミホイルと重曹持ってきてくれ」


「家宝ならもっと大切にしようよ」


「いやあ、だってハエ叩きだし……」


「だよね。俺も刀とか拳銃のほうがよかった」




<第4話 虹治が颯也に黒幕の疑いをかけられるシーン>


「ってことは、答えはひとつだな」


「……と言いますと?」


 颯也はおれに向かって銃を突きつけた。


「お前が虫殺しの犯人ってことだよ」


 バンッ


「痛えぇぇぇぇ!!!」


「あっ、すまん」


 しばし悶絶。


「脅してる最中に撃つなよ!!」


「指がすべったんだよ。わざとじゃない」


「せめてもっとすまなそうな顔しろよ」


「悪いな、お前よりイケメンなのに武器もかっこよくて」


「ぜんっぜん反省の色が見えないんですけど!?」




<第5話 ラスボスを前に螢子が虹治の手を握るシーン>


 螢子が優しく手を握った。こんなことは人生で初めてだった。神様が最期に情けをかけてくれたのかもしれない……と思ったとたんに、螢子が手を振りほどいた。


「ごめんなさい。なんか湿ってるから気持ち悪くて」


「そ、そうか。きっと武器を握っていたせいだな」


 俺は涙が出そうになるのを必死でこらえる。


「………」


「………」


 気まずい沈黙。


「今すぐ手を洗ってくるからもう一度チャンスをください」


「しょうがないなぁ」




<第10話 空悟がはしゃいでつかまり立ちをするシーン>


 筋斗雲がどんなものかは知らないはずだけど、空悟は花が開いていくようにぱあっと手を広げた。てんとう虫が飛び立ち空高くのぼってゆく。空悟はおれの腕につかまり立ちをして、ぴょんぴょん跳ねた。


「兄ちゃん、オラわくわくすっぞ!!」


「しゃ、しゃべった!? 」


「そ、そんなわけないでしょ。聞き間違いだって」


 俺と姉ちゃんは空悟をまじまじと見つめる。


「アウー、アー」


「なんだ、やっぱ気のせいか」


「でしょうね」


「オー、オー……オッス!!」


 どてっ 


 おれと姉ちゃんがずっこけた拍子に、てんとう虫も空から落ちてきた。

 こんなアホに付き合ってくれてどうもありがとう。

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ちょっとハエ叩きで人類救ってくる 文月みつか @natsu73

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