涙に除湿剤は効かない
十余一
涙に除湿剤は効かない
長年共に歩んできた
水魚の交わり、金蘭の
しかし、オレは
そうして一寸先も見通すことが出来ない暗闇に囚われたオレは、長い間、失意と懐古の念をそのまま夢に結んでいる。あの姿、あの部屋、あの道、あの言葉、思い出す全てに暗さばかりがつき纏う。記憶の鮮やかさはそのままに、明るさだけが
もしもオレに心というものがあったならば、その
「確かここらへんに……、あった!」
懐かしい声と共に、眩しい光が差し込んできた。暖かい光だ。
「ちゃんと仕舞っておいて良かったぁ」
「本当本当。ありがとね、母さん」
「あんた、このぬいぐるみ大好きだったもんねぇ。ご飯食べるときも寝るときもお出かけするときも、絶対に離さなかったの懐かしいわ」
「懐かしいというより、ちょっと恥ずかしいや。でも、産まれてくる赤ちゃんも、この子のこと気に入ってくれるといいな」
無二の友と、その
オレの中に立ち込めていた狭霧が晴れ、希望が
「あれ? なんか濡れてる」
「嘘ぉ!? ちゃんと押し入れに除湿剤入れておいたのに……!?」
涙に除湿剤は効かない 十余一 @0hm1t0y01
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