魔女の本屋は婿を取る

ムネミツ

第1話 魔女の本屋は婿を取る

 夕暮れ時、シャッターが下りている店が多い地方都市の商店街。


 夕食の買い物などで人が出ているはずの時間だが、人通りはない。


 周囲がコンクリートの店舗やビルが多い中、商店街の北東にポツンと一件。


 木造二階建ての古めかしい本屋があった。


 その本屋、屋号は『赤虫堂あかむしどう』へと歩いて行く一人の人物。


 背は百六十ほどで鍛えられた体形をした、短い黒髪に顔はフツメンな少年。


 緑のパーカーにジーンズに白スニーカーと言うラフな服装、古びた本屋に用がありそうには見えない少年がガラリと引き戸を開けて店に入る。


 「店長、失礼します」

 「ああ、いらっしゃい弟子君♪」


 木製の本棚が三列の和風の店内。


 店の奥から少年を弟子君と呼びながら迎えに出て来たのは、死者の如く白い肌に長い黒髪と幽霊か魔女かといわんばかりの黒い着物に赤い帯の美女であった。


 「まあ、上がってくれたまえよお茶でも飲もう♪」

 「いや、商売しなくていいんですか?」

 「良いんだよ、七割は道楽だし」

 「残り三割は、ろくでもない事でしょう?」

 「人聞きが悪いなあ♪ 三割は、君の魔術師教育だよ♪」

 「ろくでもねえじゃないですか!」


 美女にツッコむ少年、


 「諦めなって、君はもう私と縁が出来たんだから♪」

 「悪縁を切る魔法とか教えてください」

 「つれない弟子だねえ、まあ逃がさないよ♪」


 美女は少年に左手の小指を向けると、指先から赤い糸を射出して少年を絡め取る。


 「ぎゃあっ! ちょ、普通に行きますから勘弁して下さい!」

 「駄目だよ~♪ しゅるしゅる~♪」

 「いや、俺は魚じゃねえっす!」


 美女が笑うと、指先の糸が巻かれて行き少年を店の奥まで引きずり込んだ。


 少年が連れ込まれたのは畳敷きの和風なお茶の間。


 テーブルを挟んで美女と向き合いお茶を出されれる少年。


 「店長、これ盛ってます?」

 「惚れ薬をね♪」

 「ちょ、マジですか?」

 

 少年は抵抗できず惚れ薬入りの茶を飲まされ、魔女の夫となった。


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