このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(309文字)
ルドンという画家をご存じだろうか。古くは漫画家・水木一郎氏の妖怪のモデルとなり、ボードレールの惡の華にも象徴的に使われている。その特徴は「目」である。どこか胡乱に見上げるその視線の先には、一体なにが映っているのか。
まずは画像検索すべし。『オディロン・ルドン_キュクロプス』ああ、この絵か。見覚えがある絵ならば、じっとその眼を見つめるといい。もし初見の絵画ならば、その眼が見つめる先を凝視するがいい。見つめる対象がなければ、その無垢な視線は読み手に送られる。見つめる対象がそこにあるから、その眼は読み手に向けられることはない。まずはキュクロプスの眼を見つめることから、この小説は始まります。