大戦最後の希望〜最強となりて、まだ足りない〜
@ru-ra
第一章 創まり
第一章:一節 ガチャ
プロローグ ナニカの記憶
黒く、漆黒に近い暗闇の空間。
何も感じることはできず、一寸先すら見ることもできない。そんな世界に気付けば存在していた。
世界が始まった場所がここだと言われれば納得できそうだ。
誰もが見た事のある空間であり知り得ることのできない世界。
夢、見たとしても感じたとしても忘れることなく記憶に残ることなくただあったという証拠。
当てもなくこの世界を彷徨う。
ここに生まれたことを感じるために、確実に記憶へと刻み決して
あるかさえ分からない感覚。
それでもこの世界を歩き、踏みしめるために足を動かす。
コツッコツッと何も無かった世界に音がなる。
音は異常なほど聞こえてくる。自分が鳴らしているのだと数瞬遅れて気がつく。
なぜ気が付かなかったのか、何時からなっていたのか、どこで聞こえるようになったのか、そんな疑問に対して答えをくれる存在はいない。
足音を聴きながら無心で歩く。
時間の感覚はとおの昔に消え去ってしまっていた。まず暗い世界で感覚など持てるはずがなかった。
数秒か数分かはたまた数時間、数年がたった頃。
初めからこの世界を知っていたかのように、四肢と同じくらい当たり前のように全てを感じることが出来ていた。
そう認識することで、これから起こる現象に対して理解を得ることができたから歩みを止めた。
しばらくすると自分の周りだけを残し世界が変化する。
一滴の雫が垂れる。 一滴の白い雫からはじまったそれはまるで絵のように、丁寧にされど豪快に様々な色を使い真っ黒なキャンパスに色を塗るように風景が
完成したその風景は美しくも残酷な心の悲痛さを呼び覚ます世界の終わりで、まさに世紀末と呼べるものだった。
そんな絵を見ていると気が付く。
音楽ののように心地の良いものではなく、心に響く負の感情。阿鼻叫喚と評するべき旋律が奏でる不快で気持ちの悪い悪魔の音楽が演奏されていることに。
その音は耳元でスピーカーから流されているように音量が徐々に大きくなり世界に響き渡る。
世界が暗転する。
見えていた風景さえ捨て置いて世界が再構築される。
目をあけると都会の中だった。
パチパチと木の燃える音を出しながら燃え盛る民家、炎に包まれ倒壊していくビル、壊れた建造物の下や近くに何かが燃えた異臭の漂う場所。
近くにある民家を見れば何かが大きな、像全体ほどの大きさの何かに踏みならさている。
その近くから走ってくる人間がいる。
全身から血が溢れようと、何かから必死に逃れようといているように見える。
足が地面に着く度に血が溢れ生き延びたとしても後遺症は免れないほどの大怪我、他にも同じ箇所がいくつもあるのか苦痛にまみれた表情を浮かべている。
今更ながら気付く、人間を追う巨人の姿に。
なぜ気が付かなかったのか分からない、が気が付いた所で何か出来ることはあるのだろうか。
そんな疑問を持ち動こうとしたが動けない。
歩けていた足が動かない、固められたようにピクリとも動かない。眺めていろと言うことなのだろうか。
人間が巨人に追いつかれ捕まる。
巨人は楽しいのかニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべ、人間を掴んだ手の力をゆっくりと入れていく。
叫び声が聞こえてくる。
魂の叫びのように聞こえるその声には憎悪と後悔が滲み出ていた。
巨人が高らかに笑う。
その声を聞いて理解する人間、いや彼は死んでしまったのだろう。その表情は苦悶に満ちていた。
また世界が暗転する。
ブロックのように世界がバラバラになり再配置されていく。
そこは火の手迫る小さい部屋、いわゆる子供部屋というものだろう。
そんな部屋に似合わない、大柄で不清潔な男が現実から逃れようと目を背け、これから燃え死ぬであろう未来に『死にたくない』と譫言のように何度も呟く。
振動とともに部屋ごと潰され途中で鈍い音と共に途切れる声
視点が移動し潰した犯人が目に映る。
炎を纏う巨大な石の巨人だった。その目には何か見えているのかある方向へと歩を進める。
先を見れば人間が倒れている。
その先を見ることなく世界が暗転する。
夢のように感じる非現実的な光景や音。
ましてやあんな巨人のような存在たちは現実に存在しない。だが、あまりにも
夢というものは、脳内に溜まった過去の記憶や、直近の記憶を処理するときに表れる現象である。一見して非科学的な現象だと思われがちだが、これも側頭葉とニューロンの働きで説明できる物理現象だ。
現在、見えてる――見ているこの
暗転していた世界に宿る。
鉄筋コンクリートで作られた頑丈な建造物。
それはそれは小学校や中学校、高校となどの学び舎に年齢が様々な大勢の人が所狭しと入っている。
今まで見た風景と同じならばここは緊急的な避難場所なのだろう。
現に現代でも学び舎や市役所などは避難所に指定されやすく頑丈に作られている。だから最も近い場所へ人々が詰め寄せ、一時的か長期的か避難しているように見える。
そんな戦力にもならない人を守るように建物の外に武装している集団がいた。
どこで拾ったのか銃を持ち、中世のような剣や盾といった"ボロボロ"の装備を身につけ武装している20代〜50代の集団。
これまで幾度となくそうしてきたかのように連携の取れた動きで動かない車や資材などで避難所へのバリケードを展開していく。
薄汚れていて分かりずらいが武装集団はアジア顔、特に日本人に近いように見える。
ここが日本なのであれば、この終末的な世界でも自衛隊や民間団体などの組織が機能している筈なのに救援が来ていないように思える。
もしかしたら既に全滅している可能性さえある。さらにこの現象が日本だけとも限らない。
そう思えるほどあの怪物たちとは、多少の武力では太刀打ちできないほどの差があるように感じた。
ましてや、ボロボロの装備で武装している大半の者たちは長い期間戦ってきている為か疲弊し、元々着いていた血の滲む包帯からは既に意味をなさない程に血を流し生傷だらけ身なのだ。
それが更に怪物たちと武装集団側の戦力や武力の差を広げている要因でもあった。
バリケードを修復し終わる前に怪物たちはやってきた。人の身で挑むのは滑稽に思えるほどの怪物の大群。
いとも容易くバリケードを破壊し武装集団を殺していく。抵抗さえ意味をなさず腕を振るだけで葬り去られる。
それから、数分か数十分が経過したが怪物たちからの猛攻は止まる事を知らないのか止むことは無くずっと続いていた。
もっと詳しく見るべく歩を進める、今度は動きを止められることはなかった。
風景に近づけば近づくほど歩の進む速度は遅くなれど、止まらない。
世界いっぱいに風景が広がれば、一部分だけだった世界そのものが風景となる。
そんな変化が終わると同時。
誰が聴いても苦しげ、悲痛、諦めなどの負の感情が確かに感じ取れる会話、それとも独り言だったのかもしれない。
そんな中の一人だったかその場の全員から出た――零れた言葉だったのかもしれない。
周りにいる怪物たちよりも強大な存在感が現れた。
誰でも今までの怪物よりも強大な存在感を本能的に感じることができたからか避難所にいた人々は各々が自らの命を永らえるために逃げ出す。
避難所が崩れる。
鉄筋コンクリートでできているであろう避難所が轟音を周辺へと響きわたらせながら崩壊する。
逃げ遅れた避難者さえ瓦礫に下敷きになり押しつぶされる。
己が守っていたものが呆気なく壊れた瞬間を見た武装集団は突然の事態に誰一人として咄嗟に動くことか出来ず立ち尽くす。
そんな中から避難者の中に友人、恋人、家族などの大切な人たちが居た者たちは、膝から崩れ落ち胸の服を掴み浅い呼吸を繰り返す。
圧倒的な武力に対しどうする事も出来ず、脳が情報を処理し切れず呆然と立ち尽くしている間も事態は無慈悲に急速に動き続ける。
そして、その大勢の人が一瞬で死んだ原因である瓦礫の上に悠然と立っているその惨状を起こした化け物が雄叫びを上げる。
自分がここに確かに存在する事を周りに知らしめる為に空間を震わせるほどの雄叫びを上げる。
その雄叫びに呼応するかの如く周りにいた怪物たちも手を止めも叫びを上げる。
魂に響くような声はその場に居た怪物以外を絶望に叩き落とす。
『絶望』その言葉を体現したような存在。
その存在感な当てられ、立っていられるのは極わずかであり意識を保っていられる者の方が少ないほどだ。
そして、化け物は邪魔な羽虫を払う様に動き出しその巨木の如き巨腕を水平に振り――
『万雷』
切れなかった――切る事が出来なかった。
その決して大きくはない声量での呟きが化け物の腕を止めさせたのだ。
その場に居た全員に静かに、しかし鮮明に耳に届いた瞬間――
怪物たちに蹂躙されようとしていた領域。
怪物たちの雄叫びの声量が大きすぎ聞こえるはずのない領域。
その決して大きくのない声量で紡がれた呟きが、化け物や怪物らを含めたその場に居た生物全てに静かに、しかし鮮明に届き脳が言語の処理を完了たせた瞬間――
都会であるにも関わらずあらゆる色の満点の星が輝く夜空。
雲ひとつ無い
地上で悲惨な惨状を嘲笑うかの如く爛々と美しく輝く星空。
神が気まぐれで天罰を落とすように、万を悠々と超える落雷が『絶望』を残し周辺に一帯にいる怪物たちに吸い込まれる様に降り注ぐ。
怪物たちが居なかったと錯覚するほど一瞬の間に、つい先程まで目の前まで迫っていた怪物や襲いかかっている怪物たちは、一欠片の肉片すら残さず塵へと変えられる。
今まで自分たちを蹂躙していた怪物たちが、誰にやられたのかすら認識する前に逆に蹂躙される光景が目の前で起こる。
『想定より弱いな』
美しい夜空からそう呟く声が聞こえ、残っていた化け物と意識を保っていた武装集団、極わずかに生存していた避難者が空を見上げる。
万を超える落雷を落としたであろう黒と白で装飾された仮面をつけた白髪の人物は、暗い夜空のキャンパスに一滴の白の絵の具を零した様に異様な雰囲気を纏いながら『絶望』がいる場所へ’’空,,から軽い足取りで歩きながら降りていく。
化け物は動くことなく警戒の色を示し、羽虫如きに出すと思わなかった殺気を溢れ出させながらただ一点を見つめ続ける。
周りに撒き散らされている殺気はとてつもないほど濃く、幾度となく戦ってきたであろう胆力だけで起きていた武装集団の大半が卒倒するほど。
そんな殺気を正面からまともに受けている仮面の人物は、何も無かったように化け物に近づく為に歩を進める。
数秒の後、化け物の正面に常人が喰らえば正気を保てないであろう殺気を受けながら佇む仮面の人物はクツクツ嘲笑う様に肩を揺らす。
意味が伝わったのか化け物はその巨腕を振り上げ正面にいる敵に叩き付ける。
しかし、避難所を崩落させたであろう威力で放たれた化け物の一撃は、片腕で軽く受け止められる、それも周りに被害がないように威力を逃がしながら。
次はこちらの番だと言わんばかりに、もう片腕で拳を握りしめ化け物の腹部に軽く当てる。
たったそれだけで掴まれていた化け物の片腕だけを残し、残り全てを弾け飛ばす。
それだけでは仮面の拳の威力は収まらず化け物の後ろにあった山の上部を消し飛ばす。
それから思った以上に相手が弱く、威力が出たからか僅かに目を見開きつつも残心を解いた仮面は化け物の片腕をどこかへ仕舞い。
近くに居る目の前で繰り広げられた光景に脳が処理を終えていない武装者に、何事も無かったように『状況はどうだ』と問う。
しかし、続きが紡がれることは無く見ていたこの世界が崩れるように徐々に綻びを受け、亀裂を生じ光が漏れ出す。
これは夢なのか何なのか。
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