告白を断ったら天災級ダンジョンの奥地で放置されたけど、元龍王候補の力を得たので神を越える力を研究したいと思います〜復讐とかざまぁとか考えてないので関わらないで!〜
第39話(最終回)孤児院魔術士、ただいまを言う
第39話(最終回)孤児院魔術士、ただいまを言う
⋯⋯意識が朦朧として、ここがどこかも分からない。
たったの一撃で死ぬのか。
「死にたく、ない」
シャルの所にちゃんと帰らないと、怒られてしまうよ。
ファフニールとの約束を果たさないと、ナキミル達の給料も私が出しているし。
帰らないといけない。
でも、体が全く動かない。
『あーあー、聞こえてますかー』
「だれ?」
声が聞こえた。
白髪の女性。
壁に何重もの鎖で固定されて、体のあちこちから流血している女性。
その見た目は鏡の奥にいる存在だった。
「私?」
『正解。やっぱり、徐々に速くなってるね。ファフニールの力を得てから何年経った?』
「まだ、八ヶ月くらい」
『お、一年未満か! 本当に速くなったな私よ!』
私、なんで私が話しかけてくる。
見た目は同じでも、場所はおかしいだろ。
「お前は私、なのか?」
『あーうんうん。今までの私も同じ質問して来たから、同じ答えを出すね。私はアメリアで間違いない。シャル大好きなアメリアさんだよ。んで、私が居る場所は神界、君が居るのは生と死の狭間だよ』
「神界? お前は、神になったのか」
『うんうん。七十年かけて神の領域になったよ。その後に見た目だけは若返った』
「ど、どうやってなった!」
『それはダメ。私から言ったらまた、死んじゃう。すぐにね』
「死ぬ?」
『うん。あ、シャルと子供達もね。だから言えない』
「⋯⋯」
よく分からないアメリアの言葉は何故か、信用出来た。
やっぱり私なのか。
「お前の事、聞かせろ」
『それは良いよ。だってその為に居るしね。その前にさ、今何やってる? アドバイスしてあげるよ』
鎖に繋がれているのに、なんで笑みを浮かべられ⋯⋯あぁ、笑うしかないのか。
笑って辛さを誤魔化しているのか。
なんとなく、虚ろな目から感じた。
「霧の古龍に殺されそうになってる」
『あーアイツ? アイツは強いよー。最初っからガチで全力出さないと死んじゃうって。オケオケ、じゃあ次はこっちね』
一泊おいて話し出した。
『分かりにくいかもしれないけど、私は原初アメリアだよ。私が神になってから、さらに強くなろうとしたんだ。結果として神にバレて周りが殺され始めた』
神に、バレて?
『神は異物を許さない。神に成り上がり、神を脅かす存在を神は許さないんだよ。だから殺される。ルアや子供達が殺された。ルルーシュやウルと言った私の関係者は全て殺された。私は暴走した。邪神、そのような存在になったんだよ』
邪神? 世界を滅ぼす?
『世界を滅ぼすって言われてる邪神だけどさ、違うんだよ。邪神ってのは⋯⋯今、時間を急ぎたいから話すのは止めるね。とりま、神になった私は神に指名手配されて、捕まった訳よ。その結果がこれな?』
アメリアは捕まり、シャルは死ぬ。
『んで、私の存在ってのは、違う世界のアメリアさんなのよ。んで、君のような存在は私の分身体? 説明しにくいな』
目の前に居るアメリアが初期のアメリア、今の私はそいつの何番目かのアメリアなのだろう。
先程までの会話的にそう判断出来る。そして今までのアメリアは全て死んでいる。
「精霊神は私の事をあまり知らないようだったよ?」
『そうだね。だって違う世界でありながら時間帯も違うんだ。だから説明しにくい。精霊神は神界じゃなくて現世に身を置いているからね。今まで何度もアメリアは最低な結果が逃れる為に無意識に行動している。だから、私との繋がりが段々と速くなっている。それは強くなっている速度に比例している』
私は今までのアメリアの中で最速での成長をしていると。
『君の本体である私は神界で捕まってるけど、下級の神にはその存在は知られてない。そして、世界に私は私と君しか居ない。シャルは一人だ』
アメリアが笑みを消した。
視界がブレる。時間があと少ししかないのかもしれない。
『君とシャルを孤児院に捨てたのは、その一個前のシャルだ』
「⋯⋯は?」
『死に際にアメリアとシャルが協力して、自分の魂を分裂させて子供として置いたんだよ。魂が本来なら小さくなるけど、マナや神力を使って器を大きくしたんだ。⋯⋯きっと、今の君ならシャルを守れる強さになるかもしれない。だから、強くなって私を吸収して欲しい。私を、ここから連れ出して欲しい』
「それは構わないけど、あのドラゴンに私は死にそうなんだけど?」
『それね。と、そろそろ時間切れか。最後にアドバイスと力をあげるよ。家名でアメリカ、ニホン、ドイツ、ロシア、スイス、インド、チュウゴクを集めるんだ。それと邪神、彼らを全員復活させて仲間にしろ。神への復讐を餌にすれば多分いける。理由は後に分かる。そして力を与える。頑張ってくれ。こっちもまた、頑張るよ』
本当はまだ沢山聞きたい。モヤモヤが増えた気がする。
アメリアが歩んだ人生をもっと知りたい。
どうなるのか、知りたい。
もっと、知りたい事や聞きたい事がいっぱいある。
でも、時間が無いのはなんとなく分かる。
ただ、一言だけ私も残しておこう。
「シャルや皆は絶対に守る!」
『ふ、神は絶対に下に見るなよ。どんな神でもだ。⋯⋯あと123回前のアメリアはシャルと結婚してたよ。羨ましいね』
「は! ちょっとそれもっと詳しく!」
時間切れ、か。
意識が暗転して行く。
流れて来る私の知らない術式の魔術、マナを直接魔術に変える技術などなど。
それらが頭に刻まれていく。
ドクン、心臓が跳ね上がる。
加速する。
ドクン、ドクン、ドクン。
ドクンドクンドクン。
高鳴る魂動。
体の骨格や繊維、肉体を構築する全てが変わっていくような感覚に陥る。
「へぶ!」
『ほう。起きたか⋯⋯なんだ、その姿は?』
ファフニールのような翼に手足、そして顔の半分が鱗に覆われている。
体の内部から溢れるマナ⋯⋯これが私の全力だ。
今の私はファフニールの半分近くの力を出す事が可能だ。
「さぁ、全力で行こうか」
怪我した骨も全てが再生して行く。
『お前、なんでアイツのマナを使う! なぜお前からファフニールの気配を感じるんだあああ!』
けたたましい咆哮が空間を揺らす。
こいつ、強いとは思っておけど、ファフニールと知り合いだったか。
「ファフニールからマナを貰ったんだよ!」
もしかしたら龍の里出身のドラゴンかもしれない。それならこの強さにも納得出来る。
龍王候補までなったのかは分からないけど、とにかく強いのは分かった。
「さぁどこまで出来るかな。よー分からんアメリアと繋がったみたいだけど」
『来い!』
私がこの力を使うならば、あとは短期決戦だ。
加速して肉薄する。
相手の目がギロリとこちらを向いた。スピードには追いつかれている。
術式を飛ばして魔術を顕現させる。
「龍雷のブレス!」
私の右手から放たれる電気のブレスが相手を包み込む。
中では結界を展開して防いでいる。
反撃の魔術を躱して天高く飛ぶ。
勝つには、身を削らないといけない。
「肉を切って骨を断つ!」
息がしにくい場所まで来て、私は全身にマナを纏う。
そのマナを全て電撃へと変える。
身が焼けるように痛い!
「雷装の龍人」
天高くから私は落ちる。
スピードが増す度に身が削れていくのが速くなるのを感じる。
でも、止める訳にはいかない。寧ろもっと加速しないといけない。
光の速さまで加速しろ。
『ぬっ! 面白い。龍霧装』
私と同じように体に魔術を纏わせる。
「はあああああああああ!」
『来い、人間!』
紅桔梗色の電撃の化身である私、霧の龍の化身である霧の古龍が衝突する。
「名前、あるんじゃない?」
『ウロボロスだ。今後ともよろしく』
「それはこっちのセリフだよ。この森、頼んだぞ」
『ああ、言われなくても。友が生きていると知れて良かったよ』
まさかのファフニールの友人だとは思わなかった。友龍?
私はシャル達の元に帰った。
「シャル!」
「アメリア! もう、三日だよ? 心配させないでよ!」
「ごめんごめん。マナと体の回復に時間がかかった」
「全くだよ。ご飯、出来るてよ。⋯⋯おかえり、アメリア」
「⋯⋯うん。ただいま、シャル」
告白を断ったら天災級ダンジョンの奥地で放置されたけど、元龍王候補の力を得たので神を越える力を研究したいと思います〜復讐とかざまぁとか考えてないので関わらないで!〜 ネリムZ @NerimuZ
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