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配信モノ(連載予定)TSとメイドとSM

 地球は突如として溢れ出した|魔物《モンスター》によって侵略された。

 建物は破壊され、人々は食い殺された。

 モンスターによって蹂躙された人類は|能力《アビリティ》を覚醒させるようになった。

 一人四種類のアビリティ。

 強力なモノから使い道のないモノまで。千差万別のアビリティの強さは完全な運だとされた。

 天災とも呼ばれるモンスターは未だに倒せず人類は地上を放棄した。

 アビリティなどを駆使して空中に新たな都市を創り上げたのだ。

 完全な能力社会。弱肉強食のカースト社会が今の日本、いや世界である。

 日本上空にあるのは『|日本天園《にほんていえん》』と言う国である。

 国は円状に広がり、中心を宮殿、次を貴族地区、最後に貧民地区と区画を分けた。

 生活環境が異なり貧民地区は水も貴重。

 そんな貧民地区の一角に住まうのが俺とメイドである。

 勘違いしてはいけないが、メイドと言っているが給料が払えている訳でも雇っている訳でも無い。

 本人がメイドをしたいからと申し込んで来たから、生活能力が低い俺は快く受け入れているのだ。

 ぶっちゃけメイドってよりも同居人である。

 「|輝夜《かぐや》様」

 「なんだ?」

 「そろそろ地上に行きましょう」

 「そうだな。配信の方針も決まったし、頑張ろう」

 今日から俺達は活動を始める。

 生活能力も低ければ戦闘能力も無い俺。能力社会の現代では死んだも同然。

 だが、一つだけ可能性が残されている。

 それがエンタメだ。

 「大金が必要だ。ちまちま働いていたらその日暮らしが限界。ユイ、行こう」

 「はい。輝夜様」

 ツヤツヤと光輝く長い銀髪を靡かせ微笑んだ|唯華《ゆいか》と共に俺は外に出る。

 同時にアビリティを使用する。

 「【変身】」

 俺のアビリティの一つ【|少女変身《フィーユ》】だ。

 名前の通り少女に変身できる能力だ。今現在は二つしか無いが鍛えれば増えると思う。

 俺が変身したのはツインテールの赤髪でつり目。性格が悪そうな見た目だ。腰に鞭を担ぐ。

 声も高くなる。何より心がこっち側に寄って行く。

 自我を強く持たないと能力に呑まれるだろう。長時間の使用は絶対にダメだ。

 長く変身すると身体に心が完全に一体化して変身解除ができなくなる。

 「可愛らしいです輝夜様」

 「ふざけるんじゃないわよ。この能力あんまり好きじゃないし、使いたくないんだからね!」

 「フフ。そうですね」

 「笑うなよ!」

 外に出る度に使っているので、好きじゃないと言っても説得力は無いだろうな。

 外で本来の姿のまま出る訳にもいかないのだ。

 必死に働いて大金叩いて購入したカメラと配信専用端末。

 配信して貴族に好かれて大金を頂く。

 戦闘能力の無い俺が逆転する手。

 「こんな事をせずとも私が動けば⋯⋯」

 「派手に動き回るのは得策じゃないのよ。特にユイは目立つ」

 主に変なプライドで戦う時はメイド服、って言うこだわりのせいで。

 地上に行くには転移陣を通過する必要がある。

 向かっている左中、野菜を買っている客と定員の会話が耳に入った。

 「知ってるか? 数ヶ月前の貴族地区でのニュース」

 「あぁ。なんでも禁具を悪用した大罪人として処刑されたって⋯⋯確か名前は」

 「|富川《とみかわ》だよ。富川」

 「そうそうそれ」

 興味深い話だったが、先を急ぐ事にした。

 その場所に到着して兵士に、|解放者《リベラシオン》の証明書を見せつける。

 「解放者⋯⋯様?」

 「なによ。見た目がちっこいからって文句あるの?」

 敬語も使えないガキだなぁ。と思いつつ言葉を紡ぐ。

 配信のチャンネル名と設定上を意識すると、その性格がこの変身先に定着した。

 リベラシオンは地上奪還を目指す職業⋯⋯成るための戦闘能力の証明は苦労した。不正っぽい事をしたけど考えないようにしてる。

 「偽物では無い、か。地上は危険な所です。命の危険もあります。それでも行くんですね?」

 「なぜこっちにだけ言う」

 「確かに」

 「納得されました」

 そりゃあメイド服だからね。

 「あと、そのスーツケースは? モンスターから逃げる場面もあります。その様な物は良くないかと」

 「これは私の能力を発動されるための道具です。なので問題ありません。調べて貰っても構いませんよ」

 「いえ。そう言う事なら」

 転移陣を護っている人に通されて俺達は地上に転移する。

 戻る時は降りた場所に一分待機すれば戻れる。

 リベラシオンの証明書を所持してないと発動しないけど。

 さて、地上に来たのはいつぶりだろうか。

 「相変わらず空気が悪い」

 「輝夜様、配信を始めましょう。我々の目的のために」

 「うん。分かってるわよ。ちゃんと相談して方針を決めたからね。⋯⋯覚悟は決めたわよ」

 「はい。ライバルを抜くにはこの手しかありません」

 他の手もある気がするけど、唯華が熱く推すのでこの方針を決めたのだ。

 カメラを起動して端末操作、ライブ配信をスタートする。

 さぁ、俺達の生活が一気に変わる第一歩だ。

 「始めよう」

 感じる拒絶感。それを全て抑え込む。心を悪魔に変える。

 そうでなければこのチャンネルは成功しない。

 「『メスガキとMMさん』チャンネルスタートよ!」

 初の配信。命を失いかねない地上での配信。

 それはエンタメでもありながら希望を見せるためでもある。

 リベラシオンじゃない一般的に暮らす人達が地上の事を知るための機会。

 だからこそ、このリベラシオン配信には価値がある。

 その中で俺達は普通に地上奪還配信をするのではなく、エンタメに振り切った。

 「それではゼラ様、まずはモンスターを探しましょう」

 配信中の俺の名前はゼラニウム、ゼラとしている。

 唯華はメリーだ。理由は特にない。

 「ええ⋯⋯」

 俺が同意すると、ジーっと唯華が俺の方を見下げて来た。

 普段は俺の方が少し大きいが、少女になると当然見下ろされる。少女ってよりも幼女だし。

 「え⋯⋯っと」

 なんでこの人はこんなに見つめて来るんだろう。

 あ、そうだった。

 ここで俺は思い出す。

 キャラ付けとして傲慢に偉そうに振る舞うようにするんだった。

 「ふん。面倒だからアンタ一人でやりなさいよ」

 ごめん唯華。

 「お一人でいられるとモンスターに襲われますよ?」

 「⋯⋯そうね」

 特にこの身体は攻撃力ゼロだからな。離れての行動は困る。

 配信用端末をチラッと覗くと、ボチボチ人は増えているようだ。

 “初見です”
 “メイド服とか危なくね?”
 “かわいい”
 “チャンネル名に釣られてやって来た”

 まだコメントの流れは遅いが、まだ数分しか経ってないからな。

 移動を開始してEランクモンスターのトロールとエンカウントした。

 モンスターのランクはシンプルにFからSとなっている。Eは下から二番目。

 唯華と視線だけで会話を終えて、このチャンネル初のネタをやる事にした。

 「メリー、あんな雑魚サクッと倒しなさい!」

 「嫌です」

 「⋯⋯え?」

 打ち合わせでは最初の戦闘は勝って強さを見せつけた後、ミスを連発しておしおき⋯⋯って流れなのでは?

 どうして初っ端から打ち合わせとは違う事を?

 俺が混乱しているが、唯華は至って冷静に俺を見下ろす。

 「戦いなさいよ」

 「嫌です」

 なんでこの人キッパリと断るの?

 「え、っと、なんで?」

 「やる気が出ません」

 唯華の表情は真剣そのモノで嘘をついている様子は無い。

 つまり、本当に戦うやる気が無いのだ。

 ⋯⋯どうしろと?

 「いやいや。モンスターが目の前にいるのよ? 戦えってこのゼラが言ってるのよ? 戦いなさいよ!」

 「嫌でございます」

 ニコッと笑う唯華。こんな討論している間にもトロールに気づかれてこちらに向かって来る。

 まずいんですけど?

 唯華が戦ってくれないとピンチなんですけど?

 この身体じゃ体長二メートルはあるトロールから逃げられないんですけど?

 「あーっと」

 打ち合わせの中ならどうするべきか答えを探しだし、唯一の方法を見つけた。

 多分これなら問題ないだろう。

 本当に嫌だ。だけどエンタメに振り切ると考えてからこの路線で行こうと言っていた。

 誰よりも唯華がそれを望んでいた。

 今でも嫌だ。やりたくない。

 だけど、きっとそれをしないと唯華は戦わない。この場で心中すら考えそうだ。

 視聴者は三桁を超えた。ならば良いだろう。

 見せてやろう。見て見やがれ。

 ゼラニウムとメリーのチャンネル、その初ライブの日の出を。

 「こっの動きなさいよ!」

 腰にある追い鞭を取り出した。

 俺はそれを小さい頃から一緒に過ごし、これまで支えて来てくれた大切な人に振るった。

 パンっ! っと大きな音が響き渡りフリルの多いスカートが靡いた。

 俺が鞭を振るった瞬間に唯華は背中を見せて尻を突き上げたのだ。

 「さっさと動きなさい!」

 「い、嫌でしゅ」

 俺はもう一度鞭で唯華を叩く。

 ダメージは絶対に無いが痛みはあるだろう。

 その痛みは唯華に通っている。だからだろう。

 凄く、もの凄く幸せそうな歪んだ笑みを浮かべてヨダレを少し出していた。

 普段は凛々しく、カッコイイできるメイドの雰囲気を出しているのに⋯⋯。

 「も、もう一度⋯⋯」

 トロールはもうすぐ俺達に到着する。そんな時間は無い。

 鞭を使って唯華の胴体を縛り引き寄せ、膝を折らせる。いや、膝は勝手に彼女が折った。

 顎をクイッと上げて、片足を鞭で叩いた方のヒップに乗せる。

 端正な顔立ちにドキッとするが、噛み殺す。

 「そうね。きちんと戦うって言うならゼラ様の寛大な心を持ってあと一回、アナタの欲しがりな身体にプレゼントしたあげるわ」

 「戦いますっ!」

 即答、か。一度放り投げる。

 俺は最大限、全力で鞭を振るった。

 手加減すると、唯華の説教が後から来ると思ったから。

 俺はただ、鞭を振るった。

 この立場、|逆《・》だったら良かったのにと思いながら。


 “変態メイド?!”
 “MMってまさか⋯⋯”
 “なるほどねそう言うチャンネルなのねw”
 “これはこれは刺激が強いわ”

 “これは今後が楽しみ”
 “つか来てる。トロール来てる”
 “何遊んでんの?”
 “メリーさん凄い幸せそう”

 “鞭の扱い上手い?”
 “確実に右尻を捉えてやがる”
 “うーんこの”
 “えっちやん”

 “興奮して来たなぁ”
 “良き”
 “登録した”
 “貧民地区の子かな? これから頑張れ”

 “強さによっては雇ってもええよ”
 “面白そうな子”
 “メリーちゃん強いのかな?”
 “ゼラの本気がみたい”




◆あとがき◆
見直してないので拙い部分があると思います

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