第4話 一途とは?

 社内恋愛は上手く行っている時は天国だ。


 すぐそこに会いたい人がいる。


 会社内ですれ違う。

 ドキドキが止まらない。

 廊下には私と翼の他にも社員がいるのだから必要以上に親しい雰囲気はさせてはいけない。


 ――私達はただの上司と部下。


 いつでも二人にしか分からない合図や視線を交わす。


 秘密に悦びまた燃え上がる。

 甘い背徳感に浸る。

 人に気づかれないように振る舞い二人だけのスリルを味わう。

 皆の知らない私達は仮初めの恋人同士なの。

 隠した甘い嘘、バレてはいけない秘密の関係。


 そっと課長に渡された書類に貼られた付箋には「ミーティング19時。」と書かれていた。


 他の人には分からない私達だけに分かる小さな微笑み。

 頬がほんのり熱くなる。

 翼はニコリと私を一瞬見つめ、私だけに魅惑的に笑ってすぐに通り過ぎる。


 ――「ミーティング

          19時。」


 二人で交わす付箋のラブレター。ミーティングなら翼の家の事で外回りだったら私の家の事。


「俺の家で会おう。19時にはいるからおいで。」って意味で書いてある。


 私の方は一途だ。

 だけど翼には婚約者がいる。

 来年の六月に彼は結婚してしまう。

 そう考えると胸の奥が切なくキュッと痛む。


 会うのって翼の家で平気なのかな?

 私は彼の家で逢瀬を重ねる度に一番目の恋人ほんめいが突然遊びに来ないかビクビクしてた。

 どこか怯えてしまう。

 私が浮気相手だから悪いことをしているのは……私だ。

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