第4話 光ってるだろ?

キィッ。

バイクを止めて降りた。


「これが大阪?」


俺は自分の目の前にそびえ立つものを見て首をかしげた。


シロも思うことは俺と同じようで。


「なんですか……これ」


壁。


俺たちの目の前にあるのは巨大な壁だった。


「ホントの意味で要塞、だなこれは」

「要塞化したとは聞きましたけど本当の要塞なんですねぇ……」


シロの言う通り大阪は要塞化しているようで、そんな壁を見つめていると。


ギィィィィ。


音が鳴って壁に取り付けられていた扉が開き中から人が出てきた。


赤髪の女の人。


「生存者か?」


その人が声をかけながら俺たちに近付いてきた。


「そうだけど」


答えると頷いた女の人。


「そうか。まさか自力でここまでたどり着けるとはな」


そう言って女の人は壁の方に向き直って。


「ついてこい」


俺たちの顔を見ることなくそう言った。


歩いていく女の人について行くしかない俺たち。


やがてそのまま先程女の人が出てきた扉を俺達も潜ることになった。

すると。


目の前には大阪の街が広がっていた。


「中はいつも通りの大阪、というやつなのかな」

「そうなるな」


女の人が答えてくれて、ふと思い出したように俺たちに振り返った。


「名乗っていなかったな。赤石。そういう名前だ」


自己紹介してきたので俺は適当に自己紹介。


「俺は新井 優一。隣の美少女はディザスターX」

「むっ。シロ!です」


名乗り直すシロの言葉を聞いて赤石は頷いて。


「悪いが外からの生還者は全身をチェックさせてもらう」


そう言って壁の近くにあった建物を指さした。


「グールに噛まれていては奴らの仲間入りだからな」


そう言って歩いていく赤石について行き俺たちはそれぞれ同性の検査員に全身をチェックされたが


「2人とも異常なし、だな」


そう言って赤石は続ける。


「外にいたのなら壁の内側の話は知らないだろうから話す」


そう言って彼女はこれまでのことを話してくれた。


先ず大阪のように生き残った都道府県は他にもあるということ。

中でも京都はより酷い状況になっていることなど、だった。


そして大阪などの生き残った場所ではギルドと呼ばれる機関ができたこと。

そして赤石はそこの職員だということ。


「と、いうことだが、理解できただろうか?」


そう聞いてくる赤石の言葉に内心で頷いた。


要するに漫画みたいな世界になっているという認識でいいのだろう。


で、ギルドときたらやる事は勿論決まっているのでは無いのだろうか。


「ただ今絶賛冒険者募集中っていうこと?」


俺の質問に頷く赤石。


「よく分かったな。外から来たのであれば冒険者になることをオススメする。現在内側もごたついていてね。冒険者が足りていないのが現状」


ふむ。

そういうことであれば、別にいいだろうと思う。


「分かったよ。そのギルドっていうのはどこにある?」

「案内するよ」


そう言っている赤石の言葉を聞いてから俺はシロに目をやった。


「君はどうする?」

「わ、私も冒険者になります。何をすればいいか分からないし、学校とか言ってる場合じゃないだろうし」


そう言うシロ。

赤石の顔を見た。


「年齢制限とかはないんですよね?」

「ないな。むしろ若いほど戦闘技術が身につくので歓迎される」


そう言って赤石は歩いていくので俺とシロはついていく。


ギィッ。

ギルドの扉を開けて中に入っていく赤石。

それから振り返って口を開いた。


「ようこそ。ギルドへ。歓迎するよ。私はギルドマスターの赤石。これから2人の適性検査を行おうと思う」


ん?

俺の聞き間違えか?


「ぎ、ギルドマスター?」


俺は少し震える手で赤石を指さしてそう口にした。


この人がギルドマスターなのか?

むむむっ。このパターンは全く予想していなかったな。


「着いてきてくれ。検査室に案内しよう」


そうして俺たちの誘導を始める赤石。

そのまま別室に案内されて赤石は部屋の中にあった机を挟んで俺たちと向き合うように立って。


ゴトッ。

机の上に水晶を置いた。


(これもお決まりなのね)


ギルドで冒険者登録をする場合創作物の多くで水晶が採用される。

お決まりのパターンだな。


「手を置けばいいんだよね?」

「うむ」


ピタッ。


赤石にそう言われて俺は水晶に手を触れた。


すると水晶が光を放つ。


「うおっ!」


驚きの余り変な声が出た。

光るんだろうなぁとか思ってたけど、本当に光るとびっくりするものである。


中々いい結果なのでは?と思う。

ほら、水晶が光るんならいい結果というのはお決まりだと思うから。


俺は勝手にそう思っていたけど、


「う……ぅん?」


赤石の顔はあまりよくないものになっていた。


んで、そのまま赤石はブツブツと小言を言いながら手に持っていたボードに何かを書き込んでいく。


あれ?あんまいい反応じゃない?


そう思っていたら赤石は今度はシロに目を向ける。


「次は君だな」

「は、はい」


少しおどおどしながらシロは水晶に手を当てる。

すると、緑色の光を放つ水晶。


俺の時は無色の光だった気がするんだが。


なんで色が着いてるんだ?と思っていたら


「す、すごいぞ!これは」


赤石の表情が急に変わる。


「緑はヒール系の色だ!」


がっ!

シロの両肩を掴む赤石。


「君にはサポーターとしての能力が恐らく備わっている!これはすごいぞ!」

「ほ、ほんとですか?!」


喜ぶシロ。

その後に赤石は頷いて色々と説明をしていくが。


「お、俺は?」


先に検査をした俺には何も無いのか?


そう思い声をかけたが「後でな」と言われて先にシロに説明していく赤石。

そのままシロは赤石に促されて先に部屋を出ていった。


残された俺と赤石。

やっと赤石が口を開く。


「うん。すごく言いにくいんだが、ユウイチからはこれと言ったものを感じられなかったし、水晶も反応を示さなかった」


そう言われて俺は聞き返す。


「光っていたのに?」

「光っていた?私にはそうは見えなかったが」


キョトンとする赤石。

そのまま待っていてくれ、と部屋を出ていく。


ポツンと残された俺。

机にはキラリと光る水晶。


「さっきのは幻だったのか?」


複雑な思いのまま俺はもう一度水晶に手を当てた。


ぽあぁっ。


鈍く光る水晶。


「……やっぱり光ってるんだけど」


こっちの地方の言葉で言うなら、バリバリ光ってるとでも言うのだろうか?


それくらい光ってるのに、赤石にはこの光が見えていないのか?


いや、待てよ。シロの反応も思い出す。


そういえば、シロも俺が赤石に光ってただろ?と言った時も不思議そうな顔をしていた。


「……もしかしてこの光は俺しか見えていない?」


どういうことなんだ?


まだまだ分からないことだらけだ。


「この光が俺の妄想じゃないなら、俺だけ特別な力がある、とか?なのだろうか」


もう少し踏み込んでみるか。


水晶を覗き込んでみる。


すると。


バギャリッ。


「うわ、水晶が割れた?」


どうしよう。

そう思ったその時。


コンコン。

ノックの音。


「お待たせ」


赤石が部屋に戻ってきた。


チラッ。

水晶の方に目をやる。


「割れてる?」


歩いて水晶の破片を確認する赤石。


「これが割れるなんて話聞いたことがないが、寿命か?」


首を傾げて水晶を回収すると今度は俺に目を向けてきた赤石。


「寮に案内する。ついてきてくれ」


そう言って案内を始める赤石について生きながら俺は呟いてみた。


「ステータス、オープン」



名前:アライ ユウイチ

レベル:1


これについても聞いてみるか。


「なぁ、このステータスっていうのはなんなんだ?」


聞いてみると。

ピタッと動きを止めて振り返る赤石。


「ステータス……?」


なんだ、この反応。

少しの嫌な予感とかを覚えながら見ていると


「赤石さん」


その時別の職員が赤石に声をかけた。


「お客様が」

「そうか」


赤石は俺に鍵を渡してきた。


「急用だ。すまないが、1人で向かってくれ。このギルドを出てすぐ右の建物がそうだ。部屋番は書いてあるから分かるな?」


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無敵ニートの俺に時代がようやく追いついた件~社会不適合者と何十年も馬鹿にされた俺だけど、モンスターが日本に溢れた結果レアな【ステータス】を与えられ一番社会に適合してます にこん @nicon

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