第3話 外に出る
家に帰った俺はパソコンのキーボードを叩いた。
カタカタカタ。
300 アーラン
戻ってきた
301 ロイド
本物か?
こんな時なんだ。成りすましとかやめてくれ
外、グールウジャウジャなんだぞ?どうやって戻ってきたんだよ。
302 アーラン
本物。
なんか魔法使えた
んで、ステータスとかも見れた。
こう、ステータスオープン。ってさ
303 ロイド
勘弁してくれ。
魔法?ステータス?お前漫画の見すぎだぞ?
304 アーラン
まじなんだが
305 ロイド
俺はステータスなんて出ねぇぞ
そう返されて俺は困った。
んー、だってさ。
こんなもの説明の仕様がないしさ。
そうやってロイドと話しているときだった。
306 ディザスターX
アーランさん今の話は本当ですか?
と今まで傍観していたディザスターが会話に入ってきた。
307 アーラン
ほんと
308 ディザスターX
アーランさんは京都在住でしたよね?
309 アーラン
うん
310 ディザスターX
自分も京都です。助けに来るとかって出来ますか?
もう食料がありません。
311 アーラン
多分いけるけど
312 ロイド
ちょ、今の話信じるわけ?流石にでしょ?
313 ディザスターX
私も未来人にグールが現れるって言われても信じませんでしたよ数日前まで。
でも、今なら信じられます
それっきりロイドは黙り込んでしまった。
314 アーラン
どこまでいけばいい?
多分助けに行けるけど
315 ディザスターX
〇〇〇〇〇〇〇〇←SNSのIDです。
DMで細かい住所教えるので来てくれますか?
謝礼はします。
謝礼……か。
別に要らないんだけどな。
それきり俺は少しディザスターを呼びかけてみたがこっちは見ていないようなのでSNSに連絡してみた。
すると直ぐに返事があり最寄り駅を教えてくれた。
「ここからそう遠くないな」
とりあえず今日は寝て明日の朝出発しよう。
◇
朝起きて俺は家を出た。
それで今気付いたが隣の部屋の扉が開いていた。
玄関に体を引きずったのか血の跡がべっとり。
おそらく這いずりながら家の中に入ったのだろう。
DQN……お前はウザイやつだったけど死んじゃったら……。
いや、スッキリしたわ。
清々しいよ!お前が死んでくれて!
「……」
チラッ。
このDQNがよく乗り回していた爆音のバイクが駐輪場にあるのが見えた。
「足、もらうぜ」
そう呟いて中に入った。
入ってすぐ玄関の靴棚の上に鍵があるのが見えた。
その鍵を取ると中から呻くような声が聞こえてきていることに気付いた。
誰かいるのか?
そう思って土足で上がっていくと
「グルゥ……」
中では
「お前だったのか」
金髪のグールがいた。
あのDQNは無事にグール化していたらしい。
「グルゥ……」
今まで俺には気付いていなかったがゆっくりと振り返ろうとした金髪のグール。
その前に俺は
「ファイアボール」
グールを倒した。
ボウッ!
火がつくと一気に燃えていく。
それを見て俺は外に出た。
そして駐輪場に向かうとDQNの乗っていたバイクに鍵を刺す。
この爆音バイクには悩まされたが、こんなところで助けてもらえるようになるとはな。
エンジンはかかる。
大丈夫だな、乗れる。
「さて、」
俺はディザスターに指示された場所までバイクを走らせることにした。
大学生の頃親に免許を取らせてもらったので乗り方は知っている。
バイクで走っているとグールは流石に追いつけないらしい。
俺の存在に気付いても距離を一定以上離すと直ぐに追いかけるのを諦めるらしい。
これも何かの役に経つかもしれない。
走りながら思っていたけど道は荒れてるけど走れないほどじゃない。
「これなら大阪まで行けるかもな……」
これはネットの情報だが全国全てがこんなふうに荒れてるわけじゃないらしい。
大阪は既に要塞化しており中にグールはおらず人間達が生活しているとの話がある。
そして外からの人間を保護しているという話だ。
キキィッ。
ディザスターに指定された駅前までやってきた俺はバイクを止めてスマホでディザスターに連絡する。
"駅前まで来たけどどこに行けばいい?"
ピロン。
直ぐに返事がきた。
「ふぅん……。なるほどね」
ディザスターはマンションの一室にいるらしい。
そこのスクショと道案内を簡単にしてくれていたので俺はそれを確認して直ぐにバイクを走らせた。
そして進むこと数分。
「ふぅ」
バイクを止めてマンションの中に入っていく。
指定された階は8階。
エレベーターは……壊れてるかな?
止まっても嫌だし階段で登ろう。
8階に着いた俺はそのまま廊下を歩いていく。
幸いここまでグールの姿はなかったが……念の為警戒しながら木刀を構えて進む。
そして
「809……ここか」
コンコンコン。
ディザスターの部屋前まで着いて俺はドアを軽く叩いてみた。
インターホンはあったけど、鳴らしてしまうと周囲のモンスターを呼んでしまうかもしれない。
「アーランさんですか?」
「うん。言われた通り迎えに来たけど」
ガチャっ。
ドアチェーンが付いたままの扉を少し開けて顔を覗かせてくるディザスター。
「あ、どもディザスターです」
名乗ったきた。
ディザスターなんて微妙……カッコイイ名前を名乗ってはいるけど、予想していたのとはちがった。
(カワイイ系?っていうか女か)
とか思ってるとドアチェーンを外して完全に外に出てきた。
「こんにちは。ディザスターは適当に付けただけなのでシロって呼んでください。16歳の高校生です」
と恥ずかしそうに自己紹介してくる。
シロ……ねぇ。
そんなことを思っていたら、顔を輝かせるシロ。
「ここまで来られたって事は本当にステータス、とかあったってことなんですか?」
「うん。ほら」
そう言って俺はステータスを出してみた。
名前:アライ ユウイチ
レベル:1
「ほ、ほんとです!すごいです!こんなのあるんですか?!」
そう言いながら俺がやってみたようにシロも
「す、ステータスオープン」
と言うが、
「あ、あれ?出ませんよ?ステータスなんて」
「どういうことなんだろうな?」
もしかしてこのステータス全員に与えられたものでは無い、ということなのだろうか?
そういう話ならロイドが出ないと言って俺を嘘つきと思っていた事も納得できるが。
「うん……」
少し考えてからシロに目をやった。
「俺はこれから大阪に向かおうと思ってるけど、どう?バイクがあるんだ」
これからのことをシロに話した。
「大阪って言いますと?」
俺は頷いた。
「大阪はモンスターが現れて直ぐに閉鎖したという話を聞いた」
「本当なんですかね?その話」
「今の俺たちは信じるしかないと思うけど」
そう言うとシロから目を背けて俺は廊下を歩き出すと
「ま、待ってください。私も行きます」
タッタッタッ。そう言って横に並んでくるシロだったが、俺は人一人分距離を開けた。
「な、なんですか?この距離感は。私何かしましたか?」
先に言っておこうと思って前を向いながら口を開く。
「先に言っとくよ。女が苦手なんだよね」
と言った後に気付いたが、
(わざわざ言わなくて良かったよな?これ)
そう思いながらシロの方を見ると
「……」
黙り込んでしまうシロ。
ほら、俺っていつもこう。
一言多いんだよぁ。
あと思ったことすぐ言っちゃう。
俺がニートしてる理由はこれだ。
外に出たって素直に物言いすぎて取り繕うとか出来なくてさ。
孤立して……後はもうお察しの通り。
ただのダメ人間さ。
実力も能力も、何もないのにイヤなやつ。
社会に馴染めない不適合者。
それが俺だった。
「ん。ひとつしかないんだ」
下に降りて俺はヘルメットをシロに渡した。
「被らなくていいんですか?違法では?」
「ははは、グールが警察に連絡するってか?」
そう言って俺はノーヘルでバイクに跨る。
警察なんていないし。どうでもいい。
なのに真面目なのかまだ乗らないシロに軽く笑いながらこう言った。
「置いてくよ?ディザスターX」
「その名前で呼ばないでください!」
恥ずかしそうにして俺の後ろに乗るのだった。
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