宝石オパールは語る_8 ～ピエロが一番～

第2話 解答編

「レアルースの理由ですね」

「高品質なブラックオパールなのは分かったけれど、何がレアルースか知りたい」

「オパールは表面にみえる色やかがやきの変化を、遊色効果（ゆうしょくこうか）と呼んでいます。このルースは遊色効果のパターンが珍しいのです」

「めったに見られないパターン？」

　目の前にあるルースと、ガラスケースに入っているルースを見比べた。似たような色は見かけるけれど同じような模様はなかった。

　視線を芽衣子さんへむけた。

「この模様はハーレクインパターンと呼ばれていて、大きめのまだら模様が特徴になります。ルース全体が完全なハーレクインパターンは、まずお目にかかれません」

　ルースをみると上半分は規則正しい、まだら模様になっていた。それでも１カラットで３００万円以上と高額。完全なハーレクインパターンだったらと思うと、身震いがしそうだった。

　高額には色合いやかがやきも含まれていると思う。それでもパターンの種類も重要と感じた。ずっと眺めていられるほどの魅力的なルースだった。

　視線を芽衣子さんへ戻して、不明点を投げかけた。

「初めて聞く言葉だけれど、ハーレクインはどのような意味か知りたい」

「道化師と呼ばれる、ピエロの服装に似ていることからつけられています。例えば中世ヨーロッパを舞台にした映画などに出てくる、あのピエロです」

　ピエロの特徴的な顔のメイクと派手な衣装を思い浮かべた。たしかに似ているかも知れない。ガラスケースに入っているルースは、きっと異なるパターンのはず。

「ほかにはどのようなパターンがあるの？」

「代表的なパターンでは、ピンファイヤーと呼ばれるピンで突いたような小さい点々模様や、フラッシュと呼ばれる面が光るパターンがあります」

　芽衣子さんの言葉を聞いて、ガラスケースに入っているルースを確認した。似たようなパターンのルースをいくつか見つけることができた。

「代表パターンだから、すぐに見つかった。たくさんのパターンがありそうね」

「ブラックオパールは同じ表情がないといわれるほど個性豊かです。複数のパターンが存在するルースもあります」

　パターン以外に色や発色の強さを含めれば、似たようなルースを探すだけでも大変だと容易に想像できた。地球がくれた奇跡のひとつが宝石かも知れない。

「教えてくれてありがとう。ほかのルースも眺めてみるね」

　ほかのルースへ視線を移した。時間を忘れてオパールを堪能した。

（了）