ヒロインじゃない?

 その後、王子たちと町まで出かけた時に、いかにもチンピラですって格好をした人たちに、絡まれたりして、怖い思いをした。きっと悪役令嬢が依頼したんだろうって、王子の友達のみんなも、婚約破棄に賛成してくれた。


 そして迎えた卒業式。見た目の割に凶暴だっていう悪役令嬢を警戒して、押さえつけて、婚約破棄を宣言したのだけど……。



 なぜか、美幼女は、グラマラスな美少女に変身して、すごい美形の執事とともに出て行ってしまい、残された私たちは別室で叱られた。私、被害者なのに。


 マキシム君は、私を王太子妃にしてくれるって約束を破って、新たな婚約者に、お金持ちの公爵令嬢を選んだ。王家が失ったお金のためには、仕方ないんだって。でも公爵令嬢では魔力が不足するから、私に愛妾になるのはどうかって誘われたけど、絶対にいや。マキシム君、良いのは顔だけで、頼りない。公爵令嬢は性格キツそう。絶対いびられる。


 王子の友達3人も、怖そうな親が連れに来て、私のことを放って帰って行った。領地に帰って、再教育だとか。


 私は、就職先(王太子妃)もなくなって、住むところもなくて、途方にくれていたところ、ヴォルグファミリーに捕まって、奴隷落ちしてしまった。


 「ああああ。もう、だめっ。こんな大きいの、むりぃ〜」


 この世界では、身寄りのない若い女性は、奴隷として娼館に売られるんだって。そして私は、


「あー、もう。こんな大きいの無理だって言ってるでしょ。他の持ってきてよ。今日はもう、小さい魔石しか補充できないって。さすがに魔力切れだよー」

 

 多大な魔力を見込まれて、魔道具工房の魔石補充奴隷として過ごしている。

 一日中、空っぽの使用済み魔石に、魔力注入するだけ。

 心身共に健康じゃないと、魔力の質が悪くなるとかで、3食昼寝つき。清潔な広い部屋。運動できる広い庭付き。ペットとして、そうじ用スライム飼育可。

 住み込みの就職先としては、悪くないんじゃない?


 寝っ転がって、差し入れの恋愛小説を読みながら、右手に持ったクッキーをかじり終わったら、手のひらサイズの魔石を握って、魔力補充終了。楽勝、楽勝。

 魔石って結構高いんだって。大儲けだよ、魔道具工房。

 ボーナス代わりに、専用の召使いもつけてくれた。イケメンの奴隷。ありがとう、工房長。お礼に、魔道具の開発アドバイスしてあげたよ。やっぱり、異世界行ったら魔道具作りは定番だよね。


 黒髪を染めるために開発した、ヘアカラーブラシは大失敗。なぜか、叩いた分だけ髪が生えてくる、増毛ブラシが完成した。一回叩くと髪の毛が1本〜。2回叩くと髪の毛が2本増える〜。そ〜んな不思議なブラシが、爆売れ。

 

 ヴォルグファミリーのボスも大絶賛したとかで、私は奴隷身分から解放されて、今では魔石補充室長、兼務で開発部主任! 役職付の正社員だよ。やったね! 魔道具工房も、魔道具コーポレーションに名称を変えてレベルアップしたよ!

 もらった給料で、召使い奴隷も解放して、今では私専属の有能な秘書として働いてもらってる。


「室長。新開発の目薬の売れ行きも好調だそうですよ」


「うーん。目の色を変える目薬を作ったのに、なんで出来上がりは老眼改善目薬になったのかな」


「これもヴォルグファミリーの幹部様から高評価いただいております。室長のおかげで、わが社の業績は右肩あがりですね」


 秘書のタクトは年下だけど、なかなか優秀。仕事では私がボスだけど、プライベートではタクトはちょっとS気があって、きゃっ、恥ずかしい。

 来月、結婚予定だったりする。


 異世界で就職したけど、なんとかうまくやってます。

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悪役令嬢は3歳? 白崎りか @yamariko

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