grand father clock【古時計より愛を込めて】

たから聖

第1話 おじいさんの古時計

ボーン……

ボーン……

ボーン…


100年動いた、ホールクロックが

おじいさんと共に、その人生に

幕を閉じようとしていた。



深夜に鳴り響く12回の鐘の音色が、新しく迎える

天国への扉を開けようとしていた。



おじいさんが産まれた日の朝に

この家に届いたホールクロック。



楽しかった事

悲しかった事も、

この時計は…見てきたのだ。



おじいさんの名前は、

チャールズと言う。この100年もの間には…


たくさんの出来事があった。




美しい妻との出逢い。

楽しかった結婚生活。



子供達が産まれて、そして孫の誕生や、四季折々の記念日。



家中に香る、甘いケーキの香りも



子供達や孫らの笑い声も、

全てがおじいさんの記念日だった。




命が亡くなりかけている今…。



皆との別れが、悲しくもあり

そして、おじいさんは…


たった1つの事を後悔していた。





それは……?



妻のエリザベスに対して、もっともっと、




そう伝えれば良かった。と…涙が一筋流れたのであった。




妻のエリザベスは、もう

50年前に亡くなっている。


看病ばかりの日々で体力も限界を感じていたチャールズは、



大きな古時計を前にして

大きな疑問を投げ掛けたのだった。





『わたしは何故こんな目に遭う。わたしが何かしたのか?こんな目に遭うくらいなら、いっその事殺してくれ!!』




愛する者よ……

妻よ。私の人生に入って来てくれたのに、



神は何故、わたしを苦しめるのだ。






若きチャールズは…息を引き取った美しき妻

エリザベスの頬に顔を寄せて、

たくさん涙を流した。







おじいさんの記憶が、どんどんと

遠のいていく。




目を閉じると

光に包まれ美しき音楽と共に、


女神が現れた。





その女神の顔は

若かりし頃のエリザベスだった。





エリザベスは…

歳を重ねたおじいさんの手を握りしめて語りかける。



『ずっと天界で貴方を見守ってきたわ。わたしは…貴方が自分を責め立ててた事も知ってる。だけどね、、違うのよ。』




おじいさんの魂は、肉体を離れて天国へと、

向かい始めた。




『エリザベス、、、わたしは……お前をとても心から愛していたんだ。ごめん。今さらごめん。』




女神のエリザベスも頷きながら、

こう言った。



『わたくしも。同じだったわ…』




女神のエリザベスが

おじいさんの魂に吐息をふぅっと

吹き掛けると、



おじいさんは…



大天使へと変化した。そして美しき妻へと、伝えたのだ。




『ありがとう。この様な姿にしてくれて。』



お互いに手を取り合いながらも、

『再度、愛し合おう。』




大天使へと変化したチャールズと

女神のエリザベスが


天界へと飛び立つ頃……まるで祝福するかの様に




grand father clockが

大きな大きな鐘の音を鳴らしながらも、



再び




時を刻み出した。



おじいさんと…共に生きてきた古時計は、



きっとこれからも、

残された家族、皆の幸せを見つめながら




行くだろう。






2人が過ぎ去りし部屋には……

甘い香りが漂っていた。




リンゴーン……ベルが鳴る。


……

エミーが孫の妻として、我が家へとやって来た。




[完]



※あくまでも二次創作です。

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