第8話 美しい誘惑 晴美

 慈代やすよに「シャワー借りていい?」と聞く晴美はるみ。慈代が「いいよ」というが、うららに「慈代やすよからにしなよ」と言われ、慈代やすようらら晴美はるみの順番でシャワーを使うことになった。恵人けいとは最後だ。

 慈代がバスルームに行っている間、恵人は二人にさんざん慈代とのことを冷やかされた。

 慈代の後、麗がバスルームに行く、シャワーから帰ってきた風呂上りの麗は石鹸のいい香りがしてドキドキする。

晴美は慈代からバスタオルを借りてバスルームに行く。まだ大丈夫なようだ。

「晴美さん、酔ってないようですね」

恵人が言うと、

「そうだといいんだけど」

と麗が心配そうに言う。

 晴美がバスタオルを身体に巻いてバスルームから帰ってきた。恵人はドキッとした。なんだか目のやり場がないと思っていると、いきなりバスタオルを取って一糸まとわぬ姿で慈代のベッドの方に歩いて行く。恵人はあまりのことに呆気に取られた。

「恵人君。こっちに来る?」

と言って晴美が振り返る。恵人が何も言えないでいると、まっすぐ恵人の方に歩いてくる。

 晴美は何も身に付けていない。目のやり場がないとは、まさにこのことだが、恵人も男子である。つい見てしまう。慈代が怒った口調で

「晴美! 下着くらいつけなさいよ! 恵人君もどこ見てるの!」

晴美は座っている恵人の前に立ち、まったく隠す素振りもなく、両手で髪をまとめ上げて微笑む。

「恵人君、目線が正直ね。いいのよ。せっかくなんだから、普段見れないとこ見とかないとね。それに慈代のばかりじゃ飽きるでしょ」

という。

 慈代が慌てて

「もう! 恵人君、見ちゃダメ。晴美! 下着付けなさい!」

「だめ、今からいいことするんだから」

と言ってベッドにもぐり込んだ。

「恵人君、こっちに来ていいのよ」

晴美がベッドの方から呼ぶ。

「もう、行っちゃだめよ……恵人君、あなた。晴美で興奮してない? 晴美はお酒飲むとすぐこれなのよ」

晴美はベッドの中で何かしている。何をしているか分かった気がした。見てはいけないと思っても気になる。麗が恵人君もシャワー行って来たらという。


 恵人が帰ってきても、まだ、晴美はベッドで一人で何かしている。ときどき晴美の色っぽい息遣いが聞こえてくる。

うららぁ……こっちに来てぇ」

「もう、恵人君そっち見ちゃダメ」

慈代が言う。

「もう、後輩男子の前で何やってんの」

麗が近くにあったクッションをベッドの方に投げる。

うららぁ……好きなのぉ」

顔を赤らめる麗。

「もう!」

といって、麗が晴美のベッドにもぐり込んだ。

「え? 麗さんも」

「もう、恵人君見ちゃダメ! 恵人君はこっちなの」

慈代も少し酔っているのか、恵人を抱きしめて離さないようにした。

「え……」

「いいの。二人もいいことしてるんだから……」


 次の朝、恵人が起きると慈代は酔っていたのか、恵人を抱きしめる様にして眠っている。晴美と麗が起きてくる。

「まあ……」

と麗が言う。昨日のことを思えば、この二人に言われたくない。恵人の方も慈代に羽交い絞めにされるような感じで身動きが取れない。慈代も目を覚ました。

「おはよう」

晴美が慈代に言う。

「……」

まだ眠たそうな顔をする慈代。晴美が二人を見て、

「なんだか恵人君、動けなくなってるよ。慈代、格闘技でもやってるの?」

「私のだもん」

恵人を抱きしめて慈代がいう。それを見た晴美がうららを後ろから抱きしめて、

「私のだもん」

という。麗が溜息をつく。麗が恵人に、

「ごめんね。昨日は変なもの見せちゃって」

「お花畑よねぇ」

と晴美がいう。麗が呆れ顔で、

「お酒飲んで、あなたの頭の中が、お花畑になってたんでしょう」

という。

 麗が昨日帰りに買ってきたもので、トーストとサラダと目玉焼きを作ってくれた。

 それはとてもおいしい朝食だった。



第五章へ続く

子羊たちは眠らない 第五章

https://kakuyomu.jp/works/16817330654724546879


「子羊たちは眠らない」

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子羊たちは眠らない 第一章

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子羊たちは眠らない 第二章

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子羊たちは眠らない 第三章

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子羊たちは眠らない 第四章

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子羊たちは眠らない 第五章

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子羊たちは眠らない 第六章

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子羊たちは眠らない 第四章 劇団クローバーみつば感 KKモントレイユ @kkworld1983

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