光るクジラは水の歌を歌う

　地球から生物と海が消えた。
　人間は遺伝子を操作し、水と酸素がいらない体に自らを進化させた。軽い装備で宇宙空間で生きられるようになった新人類「ヒト」は太陽系中に広がった。
　それから数千年がたった。ヒトロニア政権下では一般的に水は有害なものとされている。生物と歴史を管理する部署の職員コントラは、宇宙に漂流していたなぞの少年の調査を恩師イェンリュ博士に依頼する。その少年はかつて地球に海があったころの人間であると思われた。眠ったままの少年は水の幻覚を見せる不思議な歌を二人に聞かせる。コントラとイェンリュ博士は眠り続ける少年と夢の中での対話を試みる。少年はバートと名乗り、どうしても地球にいかなければいけないと言う。
　同時期に、未知のエネルギー体を放出する彗星が発見される。それは光の核の外側に、…続きを読む