煙の向かう先
目が覚めると、今日も天気がいいようで
日差しが昨日のように
差し込んでいるのが見えた。
今日はなんだか元気がない気もするけれど、
そういう時に限って何故か
起きて早々立ち上がることができた。
うんと背伸びをする。
雲に届くんじゃないかってくらいに
ぐっと体を伸ばす。
そして、ゆっくりと緊張の糸を解いていった。
梨菜「…よし。」
朝起きて汚れてもいい服装に着替える。
そしてしばらく掃除をしていなかった
ゴミ屋敷といっても差し支えない
リビングと対面していた。
梨菜「やるぞー!」
から元気もいいところ、
私は朝8時から学校に行くのを諦め
家の掃除をすることにした。
星李の部屋に手をつけるかは
決めていないけれど、
リビングや自分の部屋の
いらないものをどんどんと
捨てることにしようと決めていた。
そして、掃除をしながら
ある人からの連絡を待つことにしていた。
昨日、帰ってきてから
星李のベッドに飛び込んでは
また何時間かわんわんと泣いた。
涙が枯れてようやく
何も流れなくなった時には、
声もがさがさで水分不足になっていた。
家が広いなと思いながら
キッチンに向かって水を飲む。
そして、ソファに座ってのんびりする。
1人なのに2LDKは広過ぎる。
お仏壇を置くなら
どこにしようなんで考えもしなかった。
それは昨晩もそうで、
この家に置こうとは考えられなかった。
私がこの先1人で
この家に住んでいる想像ができなかったから。
そこで、金銭面で援助してくれている
おじさんとおばさんに連絡をとった。
私が中学を卒業するまで
面倒を見てくれた夫婦でもある。
二人には、今の家から引っ越したいこと、
できれば来年度の4月の
始業日前には引っ越しし終えたいこと、
金銭の援助は、星李がいなくなっても
二人分のお金をもらっていたので、
一人分で十分だということを伝えた。
けれど、星李のお仏壇の費用までは
申し訳ないけど手伝って欲しいと
付け加えておいた。
梨菜「えっほ、えっほ。」
散らばっているチラシの束を
思いっきりゴミ箱に突っ込む。
洗ったのか脱ぎ捨てただけなのか
わからない洋服は
まとめて洗濯機の中に放り込んだ。
自分の部屋の布団を外に干し、
その間に洗濯機を回す。
窓を全開にして、掃除機をかけた。
なんて家庭的なんだろう。
掃除だけなら誰にも
負けていないんじゃないかとも
ふと思ったけれど、
そもそもこんなに汚れている時点で
掃除は得意ではないだろうに。
梨菜「あはは…。」
頭の中で会話しては、
実際に乾いた笑い声が漏れていた。
午前は全て掃除に費やし、
窓も閉めて暖房をつける。
どっと疲れが出てきては、
ソファにどっかりと腰を据える。
溶けてソファとくっついて
しまうのではないかというほどに
だらけながら横になる。
そしてテレビをつけた。
お昼だからか、再放送のドラマに
主婦の好きそうなお昼のバラエティなどが
じゃかじゃか放送されている。
何が面白いのかわからないなんて思いながら
ソファの隅にはまっていたスマホを見つけ、
うんと力を入れて取り出した。
梨菜「こんなところにあったんだ。」
朝、夫婦に連絡をとってから
どこにやったのか記憶になかったけれど、
こうしてたまたま見つけることができて
なんてラッキーなんだろう。
何気なく画面をつけると、
数時間前に連絡が返ってきていた。
ひとつは、夫婦から
さっき連絡した旨の件を
快く了承してくれたこと。
そしてもうひとつは。
梨菜「…お母さんのお姉さんに…LINEを教えました?」
いわゆるこの連絡をとっている
遠い親戚ではなく、
本物の叔母さん…
とても近い親戚だということ。
私は、私たち姉妹は
この人にお世話になったことは
あったのだろうか?
短期間でも、もしかしたら
お世話してもらったことがあるかもしれない。
…ないかもしれない。
実際にあったら
思い出すこともあるだろう。
もしかしたら、あまりいい人では
ないかもしれない。
だって、何しろあの母親の姉だ。
ほぼ同じ環境で育ってきただろうから
あまり期待はしないでおこう。
けれど、聞きたいことは少しある。
それは今お母さんがどこで
何をしているかということ。
こちらからそれを問うために
私にもそのお姉さんのLINEを
教えて欲しいを伝えようとした時だった。
もう一通の連絡が入っていたことに気づく。
梨菜「…?見たことないアイコン…。」
ぱっと開いてみると、
そもそも友達ではなかったようで
追加するかどうかを問われる。
そのボタンを押す前に、
綴られていた文章を読んでしまっていた。
自然と惹きつけられたのだと思う。
『嶋原梨菜のラインであってますか?
あなたの母親だったものの姉です。
13時に横浜駅まで来てもらえますか』
梨菜「…えっ!?」
掃除していたせいで時間の感覚が
ほぼなくなっていたけれど、
改めて慌てて時計を見る。
すると、13時までは残り
10分ほどしかなかった。
梨菜「急すぎるよ…。」
今からお風呂入って、
ご飯食べて準備しようにも
10分じゃ無理すぎる。
そもそも、最寄駅に行くだけで
ほぼ10分使い切ってしまう。
梨菜「はぁ…。」
数日前の私も、
知り合いではないみんなに対して
当日会えないかって約束を
取り付けようとしたけど、
私もここまで無理難題なことは
言っていなかったなと思う。
ため息をひとつ漏らして、
1時間弱遅れて行くように伝えた。
***
横は前に着いてすぐにLINEを開く。
平日の昼過ぎだというのに、
人は十分すぎるほどいっぱいだった。
ただ、ひとついいことがあったとすれば
電車に乗る時、
座ることができたことだろう。
壁に身を寄せ、ぽちぽちと
連絡をするためにスマホをいじっていると、
つかつかと私の方へと歩いてくる
人影があるではないか。
不意に私の目の前で立ち尽くし、
こちらをじっと見下ろしているのが伝わる。
流石に異常な事態すぎて、
恐る恐る顔を上げた。
すると、サングラスをしており、
スーツを乱雑に着崩している
身長の高い女性がそこにいた。
よく見てみれば、ハイヒールで
身長を盛っている様子。
髪の毛は長く、前髪を作らずに
全部後ろの髪とひとつにしていた。
けれど、お世辞にもお手入れが
行き届いてるとは言えず、
愛咲ちゃんのような癖っ毛でもなさそうなのに
酷く毛先がぼさぼさとしていた。
梨菜「え、っと…」
「梨菜か。」
梨菜「え?はい。」
叔母「あんたの母親の姉です。どうも。」
叔母さんはサングラスを
少しだけ持ち上げて、
目を細めてこちらを見た。
それは笑顔ではなく、
威圧するような目の細め方でぞくっとする。
梨菜「……こんにちは。」
叔母「ん?あぁ、こんにちは。」
そう言いながらサングラスを戻す。
サングラスをしているなんて
イケイケで怖い人かと思ったけれど、
むしろサングラスをしてくれていて助かった。
目つきが鋭く恐ろしい。
まともに話せる未来が見えなかった。
えぇ…。
お母さんのところも姉妹だったとは
初めて知ったけれど、
こうも難のある姉妹だとは思わないじゃん。
しどろもどろとしていると、
叔母さんは私を置いてそそくさと
歩き出してしまう。
どこか買い出しに行くのかと思ったが、
そのまま放っておくのも気が気でなくて
そのままてくてくとついていった。
叔母さんの後ろを歩いていると、
なんだかタバコの匂いがした。
叔母「梨菜ぁー、大きくなったもんだねぇ。」
梨菜「え?」
叔母「覚えてないかい?」
梨菜「あー…私たちのこと引き取ったことありましたっけ。」
叔母「かっはっは。あれだけたらい回しにされりゃ、忘れるのも当たり前ってもんだな。」
梨菜「すみません…。」
叔母「いい、いい。謝ることは何もねぇ。そういや今日学校はどうした。」
梨菜「…今日だけ休んだ。明日から行く。」
叔母「不良だねぇ、いいんじゃねえの。1ヶ月くらいな。」
梨菜「そんなには休んでないかな。」
叔母「おお、それじゃあ親戚の誰にも似ずまともなほうだ。偉い偉い。かっはっは。」
かつ、かつ。
叔母さんはガサツな人なのだろう。
大声で笑うし言葉遣いも
丁寧で綺麗とは言い難かった。
叔母さんについて行くと、
そのまま別の路線へと乗り換えることなく
元きた道を戻って行く。
不思議でならず、聞こうとしたけれど
先に先に歩いてしまうから
ついて行くので精一杯だった。
そして、また同じ電車に乗って
家の方向へと進んでいく。
心底疑問でならなかった。
***
梨菜「えっと…。」
叔母「なんだ。」
梨菜「ここ…。」
叔母「あ?これから行く場所の最寄駅だよ。」
梨菜「この駅、私の家の最寄り駅なんですけど。」
そう。
慌てて家を飛び出して
横浜駅まで行ったというのに、
ついた先はまさかの
自分の家の最寄り駅だった。
何故わざわざ横浜まで出たのか
自分でも訳がわからなくなる。
叔母「え、それなら先に言えよ。」
梨菜「いやいや…横浜で会おうって言ったのは叔母さんですよ…。」
叔母「まあ、ここが最寄りならある意味好都合だったな。」
梨菜「…?」
今、無駄足を踏んだという話を
したはずなのだが
うまく通じなかったのだろうか。
何が好都合なのか分からずに
そのままひょいひょいとついて行く。
駅から私の家がある方向とは
反対の方へと少し歩くと、
ふと叔母さんは足を止めた。
そこは5階ほどはありそうな
小さめのマンションがあった。
叔母「ここの3階な。」
梨菜「え?叔母さんの家?」
叔母「けっ、こんなとこに住んでたら出勤まで何時間かかると思ってんだ。」
梨菜「そもそもどこで働いてるか知らないんですけど…。」
叔母「あ?あたしも梨菜がどこに住んでるかなんて知らなかったよ。お互い様だな。」
梨菜「うん…?」
叔母「だから、横浜まで無駄足だったってのはなかったことにしてくれ。」
梨菜「あ、ずるい。」
叔母「大人はみんなずるいもんだ。自分のことしか考えたくねえもんよ。」
梨菜「うわー…。」
叔母「あからさまに引いた声出しよってからに。みんな自分が可愛いのさ。梨菜も経験あるだろうよ。」
梨菜「たらい回しのこと?」
叔母「そうとも。な?大人って汚いだろ。」
梨菜「…それを言われたら何にも言えないけど。」
叔母「そういやもうすぐで成人だよな。18歳からだろ。」
梨菜「大人になりたくない…。」
叔母「かっはは、ようこそこちら側へ。」
梨菜「うわうわ、本当に嫌だ。」
叔母「抵抗したって無駄なんだから。年齢だけはどうにもできねーよ。」
しゅば。
タバコをつけながらオートロックを開け
マンションへと入っていく。
あれ。
さっきは叔母さんの家ではないと
言っていなかったっけ?
タバコの匂いがコンクリートの廊下や
階段に広がって行く。
この匂いもなんだか久しぶりだった。
確か、お母さんも吸ってたはず。
3階に上がると、叔母さんは鍵を取り出して
ある一室を開いた。
中に誰かいるのか、
何があるのかと思って
ドキドキしていたけれど、
正解はその逆で何もなかった。
人は確実に住んでいないということはわかる。
ワンルームの家で、
ロフトがあるわけでもない。
私の家に比べれば随分と狭いけれど、
それでも10畳くらいは
あるんじゃないだろうか。
大きな窓があり、開放的だった。
叔母「先月、引っ越していったんだ。」
梨菜「叔母さんが?」
叔母「違ぇ。ここに住んでた人が、だ。」
梨菜「え、叔母さんってこのマンションのオーナーなの?」
叔母「残念、そこまでの財力はないさ。ここ一室だけ買ったんだよ。昔にな。」
叔母さんは靴を脱いで
部屋へと入るとすぐに窓を開けた。
バルコニーでタバコの灰を
落としているのが見える。
私も部屋に上がり込んでみる。
すると、靴下は床からの冷気を吸って
みるみるうちに冷たくなっていった。
叔母「ここ、やるよ。」
梨菜「ここって…。」
叔母「家探してんだろ?あのジジイとババアに聞いたさ。」
梨菜「酷い言い草…。」
叔母「あいつらもクソだったな。そう思わねーか?」
梨菜「…でも、お金の面ではお世話になったし、別に暴力を振るわれたことだってなかったし」
叔母「そっか、知らなかったか。」
梨菜「…?」
叔母「あの2人ねぇ、お金の支援はしてるけど、半分の額しかしてなかった。」
梨菜「…半分?」
叔母「そう。最初、2人の生活費諸々をどう考えたって1人分しかないくらいのお金しか振り込まない予定だったのさ。」
ふう、と叔母さんが息を吐くと、
口からもくもくと煙がたった。
叔母「予定も何も、結局今でも半分しか口座に振り込んでないけどね。」
梨菜「え、じゃあ、もう半分は」
叔母「あたしだよ。あたしが振り込んでた。」
梨菜「…知らなかった。」
叔母「だろうよ。思えば梨菜には話してなかったからな。」
梨菜「私にはってことは、星李には話してたの?」
叔母「うん?話してたも何も、半分でいいだろって話を聞いた時、あたしに相談してきたのは星李さ。」
梨菜「星李が。」
叔母「そ。それで、2人におかしいだろって怒鳴り込んで、もう半分はあたしが出すって言っちまってさ。」
梨菜「…。」
叔母「まあ、後悔はしてないね。」
ふう。
また息を吐いていた。
何もない部屋の隅に座り込む。
知らなかった。
知らなかった。
お金は元々半分しか
振り込まれない予定だったことも、
星李がそれを止めてくれたことも、
叔母さんが陰ながら力を貸して
くれていたことも。
何も知らなかった。
梨菜「…星李は、どうして叔母さんに相談できたの。」
叔母「そりゃあ連絡先を知ってたからさ。」
梨菜「それはなんで。」
叔母「…まあ、星李がいなくなった今じゃ話してもいいかもしれないな。星李には料理を教えてたんだ。」
梨菜「料理?」
叔母「そう。あそこんとこの老夫婦だと相手にしてくれなかったらしくてな。それで、電話帳だかなんだかからあたしの名前を探し出して連絡したんだと。」
梨菜「…聞いてない。」
叔母「内緒にしといてって言われたんだよ。こっそり上手くなりたいとか言って。だから月に1回は会ってたな。」
梨菜「…。」
叔母「星李のことは…ほんと、残念だと思うよ。」
ぐりぐり。
タバコを地面に押し付けては、
自前のものか、空のペットボトルに
吸い殻を入れていた。
そして、新たにタバコをもう1本
取り出しては火をつけてようとしていた。
そこで、心変わりがあったのか
タバコの箱も吸い殻入れも
全てを窓の淵に置き、
部屋に入っては私の前へと歩いてきた。
かつかつ、と音がしない。
今はハイヒールを履いていないから
当たり前だけれど、
駅で会った時のことを
自然と思い出していた。
叔母さんは髪を片方へと寄せると、
サングラスを外し、
突如深く深く頭を下げた。
梨菜「えっ。」
叔母「…妹は、人として許されないことをした。代わりに謝罪させてほしい。すまなかった。」
妹さん…つまりはお母さんが。
やっぱりそうだったんだ、と
納得している自分がいる。
やっぱり、星李を殺したのは
お母さんだったのか。
あの甘ったるくして仕方ない香水、
嗅ぎ間違えるはずがないもんね。
あまり信じたくなかったけれど、
あの母親なら別に驚くことでもなかった。
ほぼネグレクトのような状態で
私たちを放置したことのある
あのお母さんなら。
梨菜「…許すことはできないです。代わりに謝られたってなんだって、星李は大切な妹だから。…けど、叔母さんが悪いわけじゃない。」
叔母「…。」
梨菜「顔を…あげてくれませんか。」
そういうと、叔母さんはゆっくりと
頭を上げてくれた。
眉間に皺が寄っていた。
梨菜「…叔母さんは何も悪くないです。むしろ、感謝しても仕切れない。」
叔母「かっはは。あんなチビだったのに、こんなにも大きくなって大したことも言えるようになったんじゃ、たまんないね。」
そういうと、ガシガシと私の頭を
犬のように雑に撫でてきた。
ぐわんぐわんと振り回されるようで
内心びっくりしていたけれど、
手が離れると少し寂しさも感じた。
叔母さんはまた窓辺に向かい、
タバコを1本取り出している。
その背中は、良くも悪くも大人だった。
叔母「覚えてるかい、あたしが2人を引き取った時はまだ給料が安くてね。プリンをケーキだって言って嘘ついて買って帰ったんだ。」
梨菜「…!」
°°°°°
梨菜「…星李と私が小さい頃、親戚の家を転々としてるって言ったよね。」
麗香「うん。」
梨菜「ある親戚は貧乏なのに私たちを引き取る羽目になって。…その暮らしの中で、プリンはケーキだったんだ。」
麗香「…へぇ。」
梨菜「だから暫くの間、星李は間違って覚えてたの。」
°°°°°
梨菜「…叔母さんだったんだ。」
ぼそっとつぶやきが溢れる。
叔母さんには届いていなかったようで、
またタバコに火をつけていた。
梨菜「叔母さん、でもこの部屋を買ったんでしょ?それで、私たちの援助もしてるんでしょ?」
叔母「そうだが。」
梨菜「お金…どうしてるの。」
叔母「あん?そりゃあね、10年も20年も同じ会社で働いて業績上げてたら給料も良くなるんだよ。」
梨菜「…生活、苦しくないの?」
叔母「あたしだって自分が1番可愛いんだ。余裕なんてなかったらあんたらの面倒なんて見てらんないよ。」
梨菜「…叔母さん、いい人だね。」
ふん、とはなを鳴らしては
また息を吐いていた。
叔母さんは私たちのことを
ずっと気にかけてくれていたのだと思う。
そうじゃなきゃお金の支援はまずしないし
星李にも料理を教えないはずだ。
それに、この部屋をあげるだなんて
発想にもならないはずだ。
叔母「家賃や生活費諸々はこれまで通りあっちの老夫婦持ち。額は1人になっても変えるなと伝えておいた。こっちでは大学や高校での費用を受け持つ。」
梨菜「…っ。」
叔母「星李の荷物は老夫婦の部屋がひとつ余ってるから、そこに全て詰め込めるはずだ。数週間後に引っ越し業者を呼ぶから、家の荷物全部まとめとけ。」
ちらとこっちを見ることもない。
しゃがむのがキツくなったのか、
どかっとあぐらをかきだしていた。
叔母「それから、好きなことを学べ。好きな進路を選べ。梨菜は自分で未来を選べるんだ。好き勝手に生きろ。」
梨菜「…うん。」
叔母「働き始めるまでは面倒見てやる。」
梨菜「…働き始めてからも連絡していい?」
叔母「会うんなら、タバコを吸える場所にしてくれよ。」
ふう。
何度目だろう。
タバコの煙が宙を舞う。
けど、私は知ってる。
星李はタバコの匂いをつけて
家にいることはなかった。
多分、星李といる間は
タバコを吸うのを止めていたんだろうなって。
叔母さんは、大人だった。
誰よりもガサツで
品はないかもしれないけれど、
誰よりも大人らしかった。
現実を噛む 終
現実を噛む PROJECT:DATE 公式 @PROJECTDATE2021
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カクヨムを、もっと楽しもう
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