桜色前線

ミンイチ

第1話

『今年最速の桜色の花は〇〇県◇◇市にあるこちらのお宅の梅でした』


 レポーターの声がテレビから聞こえてくる。


 時間は夜の7時前、各局がニュースを流している時間だ。


 ニュースでは、桜色に変わった梅の花が写っている。


 数十年前、この世界から桜が


 枯れたのではない。


 種子や苗木、若い木もとても古い木も全てが消えた。


 ただし、消えたものは材木となっているもの以外の桜だけであったため、家が倒壊することや桜の木の根元に埋めたタイムカプセルとその中に入っていた指輪やビー玉のようなは消えなかった。


 それでも十分世界中が混乱しているのにもう一つ、世界を驚かせることが起きた。


 日本で咲いている花々が桜色に変化したのだ。


 その変化は2,3日と消えるのだが、その変化する条件が桜が開花するものとほぼ同じだったため、かつては「桜前線」と呼ばれていたものは「桜色前線」と名前を変えて今も使われている。


 そして、その桜色前線は春を告げるものとなった。


 そして、その桜色化現象は海外の一部地域にも広まった。


 その一部地域というのは、かつて桜が植えてあったところの近くだ。


 その桜色の花は海外の人にも人気なようで、その様子を見るために遠くから来る人もいるほどらしい。


 そのようなことが今流れているニュースの特集で言っている。


 ニュースでは季節のおやつが紹介されている。


 そのおやつの名前は「桜餅」だ。


 正確には「桜餅」だが、現在は真の桜餅は存在しないため、「桜餅」となっている。


 桜が失われたことで消えたのは美しい景色だけではない。


 伝統的なおやつなども消えてしまったのだ。

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