第45話

 下位貴族の挨拶待ち時間だからよもや誰も絡んできまいと思ったら、いたよ。


 ジャクリーン・ヘイスト男爵令嬢とその家族。

 男爵はまだ待機列でしょ。


「あなたたちのせいよ!」

 人に指を差しては行けません。

 ついでに夜会で大声も、自分より格上の貴族に話しかける、さらに怒鳴りつけるのは学園もマナー講師マイヤー夫人の血管が弾け飛ぶレベル。


「ヘイスト嬢、うちの弟と妹が何か」

 ベン兄さんが颯爽と登場。私とルカとマニエラさまを後ろに庇ってくれる。


「ベン!私がいるのにもう婚約ってどう言うことよ!だったらルカを寄越してくれてもいいでしょ」

 酷い言い分で大声で喚いてるものだから目立っちゃう。


「ヘイスト家には当方の代理人と話をつけたはずですが」

 ヘイスト男爵が後ろにいるお祖父様から声をかけられて真っ青だし、列を乱して周囲の方が困ってる。

 いくらなんでもうちの父の実家知らなかったとか無いよね?

 だってマートム家とは家の利益に繋がらないから、祖父のデガード家との繋がり気にしないはずないもん。


「くっそみたいな家と婚約を結んでやるって言ってんのに次男か三男で交換しても問題ないでしょ!!!」

 あ、娘は理解してなかった!!

 ジャクリーン、ケバいし気性荒いし、家同士の約束スルーだし、うちが引き取る理由ゼロだよ。


「くっそみたいな家と婚約して頂かなくて結構ですよ?」

 ルカちゃん!


「そもそも私は三男で家を出る身ですが、わざわざどこぞに婿入りしなくても生活に困ることはありませんし、貴族位に拘ってもいないので、貴女のように気性の激しい女性と人生を共にしたいなど鼻毛の先でも思いません」

 ルカちゃん、鼻毛の先って。

 その言い草だとベン兄さんが流れ玉食らって泣いちゃうよ。


 ベン兄さんも貴族位に留まる事にこだわってなくて、でも結婚しないとか言うとジャン兄さんや父さんたちが自分を責めそうだから、グイグイ来たジャクリーンが、持参金無しで婿入りでも良いと言うから、親にも心配掛けないかと考えた結果、婚約したらちょっとジャクリーンが脳みそバーンになっただけだよ。


「ヘイストさま、うちの弟には私より強くて美しい人しかお嫁さんに来てほしく無いのよ?」

 シナっとルカの肩に頬を乗せ、腕を絡めて挑発する。

「リィンより強いってどこのドラゴンだよ」

「嫌だわ、ドラゴンは美味しいお肉よ」

 ちょっと頑張れば倒せるので私より弱いよね。

「何言ってんの!女が強くある必要ないでしょ!」

 まさにムキーーーってなってるの初めたみた。


「うるさいよ。私はルカより優しくてルカより気がついてルカより強くて美しい人としか結婚しないの」

 ルカにもたれ掛かってルカを見上げて、ルカは私の腰を抱えて、視線を合わせる。

「俺も、リィンより料理上手でリィンより心を砕いてくれて、リィンより剣が上手く使えてリィンより綺麗な人じゃ無いと選ばない」


 ぐふふ。どうだ。ブラコンシスコン攻撃。

 これを見たらあえて求婚してくるような空気も読めない猛者はいないだろう。

 周囲で好奇心満々で見てる人たち、私とルカがイチャイチャしてても麗しい双子って事で「仲が良いのね」とうっとり見てくれる。

 そしてお互い以上の相手しか無理には、若干の騒めきが。


 ヘイスト落としのついでに「絶対に無理」ってわかってもらいたいものだ。


 ザワザワはヘイスト一家への侮蔑、困惑の視線は、私とルカの関係性の強さと言った感じ。


「全く結婚願望がないことはわかったから二人の世界劇場はやめろ」

 横からアウルとギルマスが入って来た。


 まだこれから“あゝ神よ、私たちは美しい。私のただ一人の弟はどうしてこんなに麗しいのでしょう!“とかやって、誰も近付いてこないようヤバめにお互いを褒め称えるつもりだよ。


 ナルシスト姉弟の姉弟間の不穏とか。みんな大好き貴族のゴシップ。お好きに囀れって!

 ぶつぶつ文句言ったら、やめておけだって。


 ヘイスト一家はいつの間にやら退場だ。


 いまだに貴族の挨拶が続いてるので、ならばやることは一つ。


「ルカ、お腹空いた」

「肉行こう」

 フードコーナーに進むと信じられないとか言った顔で表情を取り繕えず見てる令嬢が少し面白い。

「おい、マジで食うのか」

 呆れたギルマスと笑いたいのを堪えるアウル。

 そこに置いてあるんだから食べようよ。


 あなた達は食べ慣れてるかもだけど、私たちは煌びやかなご飯はここでしか食べれないからチャンスがあれば食べるのよ。


 ルカが肉、私はデザート、アウルとライナスは呆れつつもお肉を取った。


「ねぇ、そこのお二人」


 おっと、ヘイスト系第ニ弾ですかね?


「今日もお口の中いっぱいにしてるのね」

 あ。

「卒業式の」

「覚えてたのね?貴方たちあの日も全く人目気にしないで頬までぱんぱんに詰めてて、びっくりしたわ」

 あの時、私に話しかけてくれた勇気、尊敬できると思ってた。


「貴方たち最速で学園から消えたからその後声掛けられなかったわ」

「何か用事だった?」

 彼女はニッと笑って、

「貴方たちの行動が面白くて。しかも随分化けてたのね?」

って微笑む。


 あ、今日は地味メイクじゃ無いのに、私たちだと分かったんだ。


「貴方たちが親たちの気になってたマートムの双子って知らなかったけど、素顔がそれなら話題になってたのも仕方ないわね?」

 

 おおぅ。


「しかもそれだけの顔なら、殿下とあの令嬢が絶対興味を持って、あの卒業式の断罪劇に参加させられてたでしょうね」

 公爵令嬢を貶める側になんて絶対ならなかったし、面倒になった時点で逃げてたけどね。

 超恐ろしい予想しないでよ。


「ふふ、わざわざおブスにしてただなんて、貴方たちほんと変な子」


 ちょっとルカちゃん、お肉食べるの、少しやめよう?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね? 紫楼 @sirouf

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画