第44話
ベン兄さんはジュダス家にお迎えに行くそうなので、馬車には私とルカ、お祖父様になった。
遠くの方で「はなせぇー!」と叫ぶ声が響いてるよ。
うるさい。別に夜会に喜び勇んで行きたいわけではないけど。行かなくちゃなら、デビュタントだから気分良く行きたいよね。
ジョルジュが御者で歩いて十五分の道のりをお馬さんパカパカで一時間。
ほんのちょっとの距離でも見栄えと誘拐対策で馬車使わなくちゃなんて面倒なシステムだよ。
「辻馬車の乗り心地との差酷い」
「それは言わない約束だよ」
ルカがガタガタ言わず、身体が跳ねない馬車に思わず呟く。
「学園も家から通えば良かったのだ」
「え、アイツらと頻繁に顔合わせるの?胃が死んでしまう」
お祖父様が、私たちの在学中、借家暮らしの間に、幾度か手紙とジョルジュを寄越してた。
従兄姉たちと会うのも嫌だし、自由に冒険者稼業出来ないのも困るから断った。
あとはドグスとかのマートム家との接触狙いを避けてたし。
「お祖父様、私たちを心配するより、あの二人をとっとと処理しないと」
ベン兄さんにあっさり婿入り先決めたんだからあるでしょう。伝手が。
「ふぅ、アレらはな、ウチに置いていても外に出しても問題を起こしそうだからな」
ピッグスは後継のつもりだから婿はないか。ジャビナはうるさくて嫉妬深くて浅慮、あ、高位貴族は無理。でも本人は高位貴族しか嫌とか言いそう。
「あんなの押し込んで問題が起きたら両家共倒れでウチが慰謝料と損害賠償金で破産する未来しか見えない」
あんなの。
マジか。侯爵家が破産するほどの何かをしかねない女。恐ろしい子。
あ、侯爵家潰れたらマートムや他の親戚も詰む。
『『・・・消すか?』』
思わず、ルカと顔を見合わせた。
転移で森とか崖連れていけば、足は付かない。ふふふ。
「おい、お前たちは何もしなくて良い。もうじき一家揃っててやらかす。それまで待て」
お祖父様が杖を床でカンカンさせて止めた。
「一家?」
「ああ、バカ息子とバカ孫は賭博に手を出した。領地の金に手をつけた時が最後だ」
めっちゃ泳がしてる状態。
「すでに闇組織に絡んでおる」
それだとデガード家にも類が。
「わしはこれでも五十年この座におるからな。心配いらぬ」
でもバカ息子飼ってたじゃん。
やっと王門で「入ってよし」tてなったけど、他の馬車も多くてマジ牛歩。
「お待たせいたしました」
馬車寄せで、ルカのエスコートで降りる。
ザワッ
なんだろね。
「デガード侯爵と一緒に来てるのはマートムの・・・」
あ、うちの母の顔知ってる人か?
お祖父様と一緒に聞こえないふりで、侍従の案内についていく。
デガード家用の待機室だ。
「二人ともワシの欲目だが、ソニアより美しいし、マーシア夫人より麗しいと思う。他人から飲み物を受けたり、人目のないところには行かないように」
この年で「おやつあげるからついて来て」についていくわけないし、心配しすぎだ。
しばらく待ってるとベン兄さんが入ってきた。
「お祖父様。遅くなりました」
「デガード家の皆さま、ご挨拶がこのような時になり申し訳ありません。マレニア・ジュダスでございます」
ベン兄さんと腕をそっと組んで、丁寧に挨拶してくれるマレニアさま。
私とルカを見ても、
「とてもそっくりで麗しいご弟妹ですのね」
と兄さんに向けてる笑顔と変わらずに、話してくれる。
前のがアレだったのでかなり好感度が高い。
「ジュダス伯爵令嬢、私はリィン・マートムと申します」
「私は、ルカ・マートムです」
ジャクリーンのことで一瞬身構えちゃうけど、
「ベンさまのご弟妹でいらっしゃるのですから、マニエラと呼んでくださいまし」
と穏やかに言ってくれた。
「では私のこともリィンと」
「私はルカと」
そう伝えると安心したかのように顔をくしゃっとさせて笑ってくれた。
人の悪感情はなんとなくわかるけど、彼女は裏が全く無さそうで、逆に困惑。
なぜ兄さんにチャンスが回ってきたの。引くて数多だよね。
兄さんもこの方を逃さず大事にしてね。兄さんの幸せな未来に繋がってるはずだよ。
「お二人は普段王都にいらっしゃらないんでしょう?こちらにいらした時は是非お立ち寄りになってね」
マレニアさまは社交シーズンは王都のタウンハウス、それ以外は領地でお過ごしだそう。
「うちは冬は寒いけれど景色が良いのです。冬にしか手に入らない果物もありますのよ」
「ぜひ見てみたいです」
ベン兄さんとお祖父様が笑顔で見守ってる。
「兄さんはお勉強捗ってるの?」
「う、まぁまぁだよ」
ちょっと動揺してるけど、兄さんは地頭が良いし、慣れれば大丈夫だよね。
話していたら、呼び出しを受けた。
うちはお祖父様の枠で侯爵家対応だから遅めに入る。
大広間の扉を近衞騎士が開く。
「ヘルメス・デガード侯爵、ベン・マートム子爵令息、マニエラ・ジュダス伯爵令嬢、リィン・マートム子爵令嬢、ルカ・マートム子爵令息、ご入場です」
大広間は騒つく。
後継のはずの嫡男一家が一人もいない。
そして、社交界に一切出たことがないマートム弟妹が兄のベンが婚約者を連れて一緒にいる。
私たちの後、高位貴族が呼び入れられるのを待つ。
王様との挨拶は公爵からなので下位貴族はずっと待ってる状態。
全ての貴族が大広間に入って、筆頭公爵家から御前で挨拶が始まった。
みんなで並んで礼をしてから王族の場に進む!気が進まないけど、強制だ。
私たちまであと三家かな。
なぜか壁沿いに冒険者のアウルとギルマスがいるんだが??貴族籍残してたのかな。
「デガード侯爵、近う。此度のマートムとジュダスの慶事喜ばしきこと。二人で手を取り国がために良き領主となるように」
「「はっ」」
一緒に礼をしたままキープ中。
「マートムの双子よ。よく顔を見せてたも」
ルカと二人目線をあげる。
「ほほう、懐かしきことぞ。汝等はあのマーシア夫人に似たのだな。美しき真珠の如き者よ。今宵この国に新たなる仲間がデビューした。先達は彼らを慈しみ育て、若き者は伝統と矜持を学べ」
「ありがたきお言葉」
王様、不敬ながら、あの断罪王子の親父なんだよね。処分はしたけど。
下の弟たちを育ててる最中。
早めに王都離れて、家建てよ。
んであちこち行って捕まらないようにね?
私たちの後にも行列なので一旦、デザートに行こう。
ルカとフードブースに向かった。
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