第18話再び畑へ
あの会議から一夜明け、
足を運ぶと言っても、この間と同じように、草が生い茂る丘から眺めているだけである。
それでも、忙しそうにしながらも畑の中を楽しく走り回る
(こんな光景があってもいいと思う……)
殺伐とした世の中だからこそ、ほんの
それを彼と共に作ることが出来たら……
「おや、何処にいるかと思えば、こんなところに」
「おぬしは……」
突然声をかけられた
「お忘れですか?
私、昨日の会議に出席しておりましたが?」
スラリとした体格の男性は、丁寧な言葉の中に、少々嫌味な感情を忍ばせて言った。
「冗談だ、
ニヤリと笑い、
「何をしに来たのだ?」
と、短く問う。
「理由は特にないのですが……」
「軍師様が気になっておられる少年を見てみたいと思いました」
「そうか」
“軍師様は止めろ”と瞳で訴えながら、
「ほれ、あそこで粟の生育を確かめておるのが、例の少年だ」
と、指で指し示す。
「ほう……」
そんな感嘆の声をあげた
遠くからでは
だが、一つでも見つけられれば、彼にとって安心材料になるのであろう。
当然、一瞬でも出会った人が
ただ、
それは彼が
幼い頃に雲水の口から、“
もし少年が同族なら、詳しいことを沢山訊ねてみたい……
今まで何処で何をしてきたのか。
その場所は彼にとって生き易かったのか。
親や親族は生きているのかなど……
彼のことを考えると、次々と質問が沸いてくる。
それは止めようにも止められない思考であった。
だが、それを止めたのは
「軍師様?」
という、
ハタと気付いた
「おぬしはスリムに見えて、実は筋肉質だな」
と、場違いな台詞を口にする。
「何を仰っております、軍師様?」
そんな言葉をかけた
「まだ……会ってはならぬのか?」
「そうではないと思いますが、他の仲間達の協力を求めている以上、結果を待った方が宜しいのではないかと」
「……ああ、そうだな」
彼の言う通り、
その優しさを無駄にしてはならないと、改めて考え直した
「そうなれば、今はここにいても仕方がない」
“城へ戻るぞ”と、声をかけた
平和な時間を象徴したような
“願わくは、あの天まで明るく響く笑い声が、いつまでも続きますように”
二人は見えぬ神にそう願いながら、城へ続く道を歩いていく。
この後、不思議なことに話がトントン拍子に進むことなど知らずに……
風の色 淡雪 @AwaYuKI193RY
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