第17話第上の空
それからの
“服装が”とか“髪型が”とか、瞳に映る容姿の何処かが違うということではない。
いつになく上の空で、瞳の動きをさり気なく見ていても、定まっていないことが良く分かった。
この姿を見た殆どの者は、内心不思議に思っているであろうが、
“今は会議中ですよ”とでも言えば、ことは済むのだが、
それ故端から見ていると、真剣に聞いているとしか思われないのである。
彼が今行われている軍事会議の内容とは全く違うことを考えていることなど知らない
そんな
その態度に
「皆さん、申し訳ありませんが、一端この議論を終わらせ、別の審議に入りたいと思」
「
兵士の代表の一人が、間髪入れずに反対意見を唱える。
それに合わせて、他の参加者の一部が声を上げ始めた。
しかし、
「敵を打ち砕く作戦会議も大切だが、その前にもっと大切なことを決めなくてはならない」
「大切な事……とは?」
「それは、軍師がいなくなった城をどうするかだ」
「それなら、兵士の中の熟練した者達が」
「指揮者がいなくても、作戦通りに動けるのか?」
確かに普段しっかりとした訓練を行っていたにしても、いざ戦いとなれば一対一でもない限り、指揮を執る人間が必要となる。
軍師を担う
この際早めに彼の代行者を決めておくのもいいでは……
会議に出席した者達が、淡々と説明し続ける声に、段々と耳を傾け始めた時。
今の今まで空を仰いでいるような態度だった
その姿を
それと同時に一人の兵が、声を上げずに手を上げた。
どうやら質問があるようだ。
「あの、そこにおられる軍師様の身代わりとなる人物は、もう既にお決まりですか?」
“それとも……”と、言葉を濁して、その青年は困惑した表情を、先程から黙っている
その視線に気付いた
“やれやれ”という言葉を、態度で示しながら、
「その件に関しては、既に決まっているということだけ伝えておく」
「決まっているなら、教えて頂いても」
「今はまだそこまで開示する時期ではない」
「……」
事が収まり、中断されていた会議が進み始めた頃。
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