タオルお持参

第1話

「開けると、さも当然のように言い、閉じると、さざれ石が耳を塞ぐ。さて、鼻がもがれた痛みを失うとして、その充分でないレンズは汚れてないかい?」


つまり、眼下に晒されていたのです。

「おぎゃあ、あぎゃあ、あぁ。ああ。と、僕が真似しているのは無知の象徴なんだよね」

羊毛のセーターが静電気を吐き出し、枯れ葉が地面を塗りたくり、水道の水が凍て付くようになり始めると、必ず彼はそう言うのでした。鈍い瞼を開き半乾きの口を開け、ブルドックのような鼻を慣らしながら、そう言うのです。不思議ですね。今日で47回目となります。僕らの父シュトルゼン大王の髭と同数ですが、だからといって数に意味はありません。理性的な憶測から何千と離れた無価値の観測。怠惰な眼差しを浴びせられたインフィニティ。時だとか数だとか、私達の外界に潜んだ小人を探すような無謀な挑戦と言いましょうか、掘り起こさずとも美しい塊があるのです。しかし、真実者の追撃はやむを得ません。せめて特別性を持たせるとすれば、今年はこれで、片方の指の数と同じになるという表現で事足ります。あなたが堅気であれば、の話ですが。


随分、古い記憶に思われました。

世間の真ん中は色鮮やかなクリスマスが舞っており、物欲しそうに手を伸ばすと、必ず雪を捕まえることが可能で、街行く人々は立ち止まっては夢を持ち帰ろうとしました。

「眼がやられない方法は、きっと身近な所に隠れていると思います」

そんな世間の端っこで、知恵不足を悟られないように難しい単語を拾い集めては、古いゲームの攻防戦に届かないクオリティを私達は繰り広げていました。題は大きく見積り、戦争や飢餓について、宗教や人種、又はオカルトや宇宙人にまで想像の手を伸ばしていました。議論。議論とは名ばかりの陳腐な発煙筒のような微かな光。私達はそれを希望と呼び、難しい古文書や大学生が書いたという論文を見つけ披露し、白熱させました。あんなに明るい輝きは将来もう目にすることはないでしょう。例え他者からは微弱な木漏れ日に見えようとも、無い知恵を振り絞る弱者の攻防。忍耐。横着。あっという間に過ぎ去る時間感覚。私達の何人が共有していたのか、もう知る術はありませんが、黄色い衝動を撒き散らすあの見栄の張り合いは、充実をもたらしていたと言うべきで、友人宅の一室では外界から遮断された御伽噺のようでもありました。そして偶に窓枠から身を乗り出し、結界の逃避、雪が上半身にかかる感触、街行くアベックを眺める循環、そして友人が作動させたラジオのクリスマスソング、近所のダクトから漂う香ばしいチキンなどの送信を、満腔で浴びていました。僕らは皆、酸素が足りていなかったのです。閉め切った空間は熱気と二酸化炭素に満たされ簡単に健康を蔑ろにする始末で、欲望を単純に増幅させるツールになっており、僕等はまたギラギラと生きていたのです。

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