第13話 鳥山先生から学んだ創作メソッドのお話

 まずはご冥福をお祈りいたします。

 吾輩、鳥山先生の作品には大いに楽しませていただいた者なので。


 まあ気持ちの整理も出来たので、この辺で鳥山先生から学んだ創作メソッドでも紹介しようかなと思う。


 まずハッキリ言うが⋯⋯。


 吾輩、先生と会ったこともない一般人なので直接何かを学んだわけではない。

 ようは作品とその後のネットなどの逸話を元に、勝手に知った気になった鳥山先生の創作論なのである。


「それってただの伯爵の創作論なのでは⋯⋯?」


 そうとも言う。


 だが鳥山先生から学ばなければこの創作論に未だに辿り着けていないかもだから、これはやっぱり先生から学んだものだと思いたいのだ。


 そしてそれを今度は吾輩が誰かに伝えることが、先生の功績を世に残す事になるのではないかという⋯⋯。


 まあ独りよがりの供養だと思って付き合ってほしい。

 もしも気に食わない方はここでブラウザバックを推奨します。




 それでは『鳥山明先生流の創作メソッド』講座を始める。


 それは一言でいえば⋯⋯、


『めんどくさいなら書かない』


 である。


「⋯⋯なんかとんでもない創作論ですね?」


 一応言っておくが大天才の鳥山先生のお考えなので、吾輩たち凡人とは基準も発想も違うのでご注意を。


 吾輩がリアルタイムでドラゴンボールを読んでいた時は⋯⋯。


「なんて緻密な絵とシナリオなんだ!」


 と思ったものだ。


「違ったんですか?」


 後にネットが発達するに従い、それまで知らなかった先生の実態が明らかになってくる。


 とにかく鳥山先生は「めんどくさいのが嫌だった」らしい。


 ベタを塗りたくないからスーパーサイヤ人を思いついた。

 背景を書きたくないから周りを吹き飛ばし荒野にした。

 などが有名なエピソードである。


「⋯⋯そんな理由であのカッコいいスーパーサイヤ人になったんですか?」


 まあ時間も限られる週刊連載だったし少しでも作画カロリーを節約したい気持ちはよくわかるが。


 だからと言って漫画が手抜きには一切見えないのが凄いところだ!


 ようするに先生は『書くべきところと、書かなくても重要じゃない部分』の使い分け取捨選択が抜群に上手かったのだろう。


 この『めんどくさければ書かなくてよい』だが、これだけだとただの手抜きになる。

 当然読者にも見透かされる。

 だが当時の読者はそんな事にまったく気が付かなかった。


「なんでですか?」


 それはもう1つの鳥山メソッド『言い訳の上手さ』だ!


「言い訳?」


 では実際の漫画の内容から説明しよう!


 鳥山メソッドが全開になってくるのはサイヤ人編からだな。

 ⋯⋯まあ「もうちょっとだけ続くんじゃ」の直後だし、あんまりやる気が無かったのだろう。


「それであの人気のサイヤ人編なのですか⋯⋯つくづく天才ですね」


 紹介するシーンはあの『ヤムチャ死す』の真相についてだ。


「ヤムチャってあの有名な栽培マンに殺される⋯⋯」


 そう、あの死の真相だ。


「あれって生き返れないクリリンの身代わりで死んだんでは?」


 そうなってるなストーリーは。


「ストーリーもなにも他に何があるんですか?」


 ズバリ作者の都合。


「⋯⋯え?」


 この後の戦いはナッパ無双の禿しさを増してゆく⋯⋯。


「伯爵誤字ですよ『禿げしさ』じゃなくて激しさです」


 いや『禿げしさ』なのだ。


 この後の生き残りメンバーは、

 禿げ:ピッコロ・クリリン・天津飯・チャオズ・ナッパ。

 髪あり:悟飯・ベジータ。


 ⋯⋯なのだ。


「⋯⋯みごとに禿げばっかりですね」


 多分この時の鳥山先生はキャラ多くて書くのがめんどかったんだろう。

 なので『髪の毛書くのがめんどくさいヤムチャを真っ先に退場させた』という考察があるのだ。


「⋯⋯まさか、そんな理由で?」


 これは後年に先生のめんどくさがり癖が明らかになってからの考察だからな。


 なので当時は本当にシナリオ通りの『クリリンの身代わりで死んだ男気あるヤムチャ』としか映らなかった。


 しかもこの後は『クリリン怒りの無双』で栽培マンを全滅させている。


「⋯⋯これも書くのがめんどかったから?」


 さっさと終わらせたかったんだろうな。


 このようにドラゴンボールでは作画コストを減らす為に、あの手この手が使われているらしき描写が多いのだ。

 だがそれを気づかせないのが『理由付けの上手さ』なのである。


 例えばこの後ナッパは破損したスーツを脱いで戦うのが不自然だったが。


「着てた方が防御力ありますもんね」


 でもナメック星でのベジータは破損したスーツを別のデザインの物に着替えるシーンがある。


 この時『肩のパーツの無い、書きやすいデザインに変更された』のだ。


「たしかあの時は「サイズが合うのは旧式しかなかった」とか言ってましたね」


 他にも悟空が急に『瞬間移動』とか身に着けたがこれは、あっちこっち移動するシーンを書くのが面倒だったのだろうと推測できるし。


 いつもスーパーサイヤ人のままでいようとかいう修行も、ベタ塗らんでいい理由付けのような気がする。


「⋯⋯こじつけでは?」


 かもしれんが、そう思えるのが面白いところでな⋯⋯。

 まあこの考察が当たってるかどうかはもう答え合わせは不可能になってしまったが⋯⋯。


 こういう一連の事から吾輩が学んだ鳥山メソッドとは!


 1 『面倒なら書かない』

 2 『書かないならその理由をでっち上げる』


 この合わせ技なのだ!


「⋯⋯マジですか?」


 ホントそう。

 吾輩この考え方を知り創作がずいぶんと楽になったから事実なのだ。


 ── ※ ── ※ ──


 さてもう一度だけ鳥山先生のご冥福をお祈りします。


 正直亡くなって、こんなにも世界中が悲しんでいただけるとは思っても見なかった。

 まるでミスターサタンの元気玉くらい世界がひとつになっていた事に感動した。

 やはり鳥山先生は世界一の漫画家だったのだ。

 もうこの規模の漫画家は出てこないだろうな⋯⋯きっと。


 吾輩にとってはドラゴンボールよりもドラゴンクエストの世界を描いていただいたことの方が重要だったと思う。


 あの絵の世界だったからこそ吾輩はナーロッパ大好きで、小説まで書くようになったのだから。


 吾輩が初めて自分のお金で買ったハードカバーの本はドラクエの小説だった。

 こちらの挿絵の、いのまたむつみ先生もまた鳥山先生を追うように旅立たれてしまった。

 こちらも謹んでお悔やみ申します。


 先生方の描かれた世界に魅了された一人として、今後も何かを書き続けたい。

 ただ、そう思うばかりである。


 それでは今回はこの辺で。

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アーデルハイト伯爵の創作講座 🎩鮎咲亜沙 @Adelheid1211

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